自分が自分を管理する、「上司と部下」がない会社

全員がフラットな関係というダイヤモンドメディア。「自分が自分を管理する働き方」を実現している
ダイヤモンドメディアは2007年9月の創業から、ちょうど10周年を迎えました。
同社が手掛けるサービスは▽不動産仲介会社向けの物件サイト制作を請け負う『ダイヤモンドテール』▽管理会社の営業マーケティング活動を自動化する『Centrl(セントラル) LMS』▽紙や電話による報告で煩雑だった不動産オーナーの収支管理をクラウド化し、賃貸経営をサポートする『Owner Box』-の3つ。
いずれのサービスも業界がこれまで効率化できていなかった領域に踏み込み、不動産流通の仕組みを改善するイノベーションに挑戦しています。
そして、ダイヤモンドメディアが挑み続ける、もう一つのイノベーションが経営スタイル。「会社」という組織のあり方への挑戦と言ってもいいかもしれません。
「会社」といえば、会長や社長を頂点とした経営トップがいて、それに連なる役職・階層があり、その縦のラインを軸にマネジメントが行われるのが一般的。対してダイヤモンドメディアには、こうした「ヒエラルキー=上下関係」は存在しません。意思決定の機能や権力が一部の経営陣に集約されることはなく、いわば全員がフラットな関係。上司が部下を管理することも、トップダウンで経営方針が下りてくることもなし。一人一人が経営にコミットし、「自分が自分を管理する働き方」を実現しています。
「こうしたスタイルは今、『ホラクラシー経営』と言われるものに当たるんだと思います」と、取締役の岡村雅信さん。
ホラクラシーとは、階層型のヒエラルキー組織とは異なる新しい組織概念。それぞれが自律的に能力を発揮することで、組織を発展させていくという考え方です。「ただ、ダイヤモンドメディアは『ホラクラシー経営をやるぞ』と思ってやってきたわけではなくて、目指す組織に向かって追求してきた結果、ホラクラシー経営と呼ばれるようになったという感じですね」(岡村さん)。
みんなでみんなの給与を決める「お金の使い方会議」

「どんどん成長したいエンジニアには、ストレスの少ない環境です」と話す取締役の岡村さん
では、ダイヤモンドメディアのホラクラシー経営とは具体的にどういうものなのでしょうか。「上司と部下」の管理体制がないという以外にも、こんな取り組みや制度から、その特性がうかがえます。
・働く時間や場所、休みは自分で決める
・リモートワークOK
・起業、副業も自由
・社長や役員は年に一度の選挙で決める
・財務情報を含む社内データはすべてオープン
・各自の給与は「お金の使い方会議」で話し合って決める
中でも気になるのが給与の決め方。「お金の使い方会議」とは一体…?
「その名の通り、会社としてのお金の使い方をみんなで話し合い、決める会議です。以前は『給与会議』としていましたが、『給与もお金の使い方の一つだよね』ということで、より幅広い視点で人件費をとらえられるように2017年度から改めました」(岡村さん)
給与の決め方はこう。「半年に一度、会社全体の売上をベースに、人件費はこれくらいが適当という指標を全員で共有します。そのうえで、まずは普段仕事を一緒に進めているチームごとに、次は各チームをシャッフルして、それぞれの給与について話し合います。株式市場の相場を決めるような感覚ですね」。
こうして決まった個々の給与はスプレッドシートで共有され、互いが互いの給与額を知っているのだそう。さらに今後は給与だけでなく、オフィス移転や人材の採用など、本当の意味での「お金の使い方」を話し合う会議へとブラッシュアップしていく考えだといいます。
ホラクラシー型組織は、上下のないフラットさや全員の意見が経営に反映されるイメージから、「みんなが平等で平和な楽園のように聞こえる向きもあるかもしれませんが、決してそうではありません。もう少し野性味のあるサバンナに近いでしょうか」と岡村さん。経営や仕事に主体的に参画する意志がない人はおそらくフィットしないだろうと指摘します。
「ただ、働く場所や時間を自分で管理でき、納得いかない上司の指示に振り回されることなく、自分の仕事に集中できるダイヤモンドメディアは、どんどん成長したい、実力で評価してもらいたいと思うエンジニアの方にとってはストレスの少ない環境だと思います。この環境を利用してスキルアップしたい方、大歓迎です」。
「どこでも働ける環境が気持ちいい」、自由を阻害しない働き方

Railsエンジニアの田中慎生さん。週2日のリモートワークで効率的に仕事を進めている
個性的な経営スタイル・ワークスタイルを持つダイヤモンドメディア。「実際どんなふうに働いているの?」「お互いの給与がオープンになるってギスギスしない?」「エンジニアとしてのやりがいは?」。一般的な組織で働いてきた人にとっては、具体的なイメージがつかみにくいかもしれません。そんなときは中の人に聞くのが一番! Railsエンジニア・田中慎生さんにお聞きしました。
--田中さんは2017年に入社されたんですよね。ダイヤモンドメディアは「働く場所や時間が自由」ということですが、田中さんのワークスタイルは?
田中:僕は『Owner Box』という自社サービスを担当しています。チームメンバーはデザイナーと営業メンバーを合わせて4~5人です。週に1回、定例のミーティングを開いて、それぞれの進捗を確認したり、プロダクトの方向性を話し合ったりしています。
このほか、「エンジニア採用」「Centrlサービスサイト改善」といった社内プロジェクトに参加していて、それぞれ週1ペースでミーティングがあります。これはやっぱり面と向かって話をするのが効率がいいんですよね。なので週3日はオフィスに来て、残り2日は自宅でリモートワーク、といったバランスで仕事を進めています。
--リモートで働くうえで、やりにくさを感じることはありませんか?
田中:まったくないですね! チームのメンバー全員がオフィスにいない日もよくあるんですが、ChatWorkやSlackを使ってリアルタイムに会話していますし、開発に必要なインフラ環境はすべてWeb上に整っていて、どこからでもアクセスできるようになっています。
実は、以前に勤めていたSI企業でもリモートワーク自体はOKだったんです。ただ、「リモートワークは週1回まで」とか「事前にマネージャーの承認を得ること」といったルールがあって…。リモート先から作業状況を共有したくても、社内サーバにアクセスできない人もいたりと、環境が整備しきれていない部分もありました。それに、必ずしもリモートワークを快く思う人ばかりではなかったりして、実際はなかなか難しいなと感じていました。
--コミュニケーションの課題や物理的な制約のために自由な働き方ができない、とはよく聞く話ですが、ダイヤモンドメディアにはそれがない。
田中:そうなんです。ダイヤモンドメディアでは、そうした要因で働き方の自由度が阻害されることがありません。エンジニアがどこにいても働ける環境がちゃんとつくられていて、気持ちがいいんです。
もちろん定例ミーティングのように、直接顔を合わせた方がいい仕事はありますし、会社としてリモートワークを特別に推奨しているわけでもありません。ただ、リモートの方が効率がいいと各自が判断したときにはストレスなく、できる環境が整っている。これはダイヤモンドメディアが、この10年で培ってきたものだと思います。
ユーザーのニーズにまっすぐに エンジニアとしての成長を感じる日々

エンジニア同士のコミュニケーションも活発
--働く場所や時間に自由があるのは、エンジニアの方にはストレスが少ない働き方ですね。
田中:ストレスの少ない働き方で言えば、もう一つ、「開発に集中できる環境である」という側面も大きいと思います。
ヒエラルキー型の組織だと、必然的に報告や調整のための仕事、管理の仕事が発生すると思います。ダイヤモンドメディアでは、全員に等しく情報がオープンになっているので、そうした仕事が必要ありません。その分、自分のやりたいこと、力を伸ばしたい仕事に集中できるというわけです。
もしも今、ヒエラルキー型組織で働いていて、「もっと開発に携わってスキルを磨ける環境が欲しい」「エンジニアとして成長したい」と考えているような方なら、きっとダイヤモンドメディアはいい環境だと思います。
--田中さんご自身、ダイヤモンドメディアで成長を感じられることは?
田中: トップダウンで仕事が下りてくるのではなく、お客様のために、自分あるいはチームでより良いものをつくっていく・課題を解決していく毎日が、とてもいい経験になっていますね。
最近は「不動産テック」が注目されていますが、不動産業界は、物件を持つオーナーさんがいて、管理会社さんや仲介会社さんがいて、物件を探すエンドユーザーがいるという複雑な流通構造を持っています。弊社の『Owner Box』『Centrl LMS』はオーナーさんと管理会社さん向けサービスで、不動産テックの中で比較的、競合の少ない領域なんです。
だからこそ、まっすぐ純粋にお客様に寄り添っていけます。「他社がこうしているから」といったことを変に意識することなく、お客様の声を聞いて、提案して、開発するという流れを丸ごと経験できるのは、エンジニアとしてやりがいがありますね。
--お客様がすぐ近くにいるという実感が持てる仕事ですね。
田中:やりがいにもつながります。例えば月に1回、営業メンバー中心に運営している「LM(リーシングマネジメント)研究会」という場があって、そこでは実際のユーザーさんや、これから導入を検討してくださっている見込み客の方々と一緒にディスカッションできるんですね。僕も参加して、ユーザーさんが日々どんな課題を感じているか、どんなふうに我々のサービスを使ってくださっているかを聞くことができ、勉強になりました。
社内の勉強会も充実していますよ。エンジニアはCTOを含めて6人いるんですが、毎週金曜日にLT(ライトニングトーク:5~10分程度の短いプレゼンテーション)形式で新しい技術や面白いツールを紹介し合っています。一人一人がスペシャリティーを発揮している環境はとても刺激的です。
「給与がオープン」に感じた不安は杞憂だった

フリーアドレスのオフィスはいつも和気あいあいとした雰囲気
--働く場所や時間が自由で、上下のヒエラルキーがなく、情報もオープンというダイヤモンドメディアの働き方に戸惑いや不安はありませんでしたか?
田中:実は僕、大学でホラクラシー経営を研究していたんです。なので、ホラクラシー的な考え方自体には違和感がありませんでした。むしろ開発の業務だけにとどまらず、会社の文化も一緒につくりあげていける、というところも魅力に感じて転職を決めました。
--すると、「給与の情報も互いにオープン」という点も驚きはなく?
田中:いや、それはビックリしました(笑)。ビックリしましたし、漠然とした不安がありましたね。「あいつの方が給料が高い、低い」みたいな、人間関係のきしみが生まれるんじゃないかなと。ですが、いざ入社してみると、それが杞憂だったことがすぐわかりました。
一般的には会社の用意したキャリアパスと等級があって、能力や達成度の評価で「あなたは、このグレード」と給与が決まることが多いと思います。ただ、エンジニアとしての評価軸を考えたとき、「それって本当に正しく反映されているのかな」と感じていたところがありました。
--従来型の評価方法に思うところがあったんですね。
田中:特にITの世界では、「半年前の期初に目標として設定したタスク自体、そもそも意味がなくなっていた」ということが容易に起こり得ます。そんな形骸化した目標の達成度で、ちゃんと評価できるのかというのはありました。
その点、ダイヤモンドメディアでは期初に目標や計画は立てません。今まさに起きている課題やお客様の要望に応えていき、それら一つ一つがKPIになります。チームで動いていて情報もオープンなので、誰がどれだけやっているか、互いのパフォーマンスがよく見えます。
自分のパフォーマンスが足りていないと思えば、もっと頑張ろうというモチベーションになりますし、「自分よりもこのくらい実力給が上の人は、これだけの働きをしている」というイメージが具体的になるので、「じゃあ、あそこを目指そう」と考えられるんです。誰かと比べてギクシャクするのではなく、いい影響をもらうという感じですね。
--エンジニアとして一緒に働くメンバーには、どんな方に来てもらいたいですか?
田中:僕の担当する『Owner Box』や『Centrl LMS』は、ダイヤモンドメディアの新規事業です。ユーザーさんが増えるにしたがって要望や開発したい機能が増えてくると思います。お客様のニーズに実際に触れながら、サービスを成熟させていくことに面白味を感じていただける方とぜひ一緒に働きたいですね。「小さい子どもがいるから、ベンチャーはちょっと…」と二の足を踏んでいる方も、柔軟に働ける環境が整っているので大丈夫だと思います!