派遣の記事2015.09.28
迫る「ハケンの窮地」
改正労働者派遣法の施行を考える
2015.09.28 文章 / 白川達朗
「専門26業務」撤廃で"ココ"が変わる

今回の改正の主要ポイントともされる「専門26業務(※参照)」とは、特殊な技能や技術を有する専門性の高い業務を指し、もともとは1986年施行の労働者派遣法で定められました。具体的には、ソフトウェア開発や、通訳・翻訳、秘書、財務関連などが挙げられます。
これまで、こうした専門的業務は最長3年間の契約期間制限が設けられていた他の派遣労働業務とは異なり、同一の事業所で無期限に働くことが可能でした。それが、今回の改正を受けて、他の一般派遣労働業務と同様に扱われるようになるため、今まで専門的業務を行っていた人々も、一般の派遣労働者の受け入れ期間制限(上限3年)の対象となるのです。
合法的に「派遣切り」が可能になる?!

“「頑張る人が報われる社会」の実現を(参考2)" と、非正規雇用労働者の雇用の安定や処遇の改善を図っている厚生労働省ですが、今回の改正にあたって、彼らの考えはあまりにも現実からかけ離れているように思われます。
まず、専門26業務の区分を撤廃し、受け入れ期間を上限3年とした意図は、雇用の安定化を目指した上でのこと、だと言います。今までならば「無期限・派遣契約」での専門業務を行っていた社員が、3年間の契約上限期間を迎えた際に派遣元を通じて依頼することで、派遣先企業の正社員になれる機会を得ることができていました。今回の改正が行われれば、もし直接雇用(正社員に登用される)のチャンスを得られなかった場合には、次の派遣先に切り替えて直接雇用を目指そうというものです。
しかし残念ながら、派遣先の企業からしてみれば、3年契約で雇った専門業務の派遣社員を正社員に登用するくらいならば、契約を打ち切って別の派遣社員を雇う方が安く上がると考えるのがふつう。それまで同一事業所で長年働いてきた派遣労働者の契約打ち切り、雇止め(やといどめ)が増加することは想像に難くありません。また、契約を打ち切りたくない場合は、同一事業所内でも別の課や部署等に異動すれば、再び3年間の契約期間を設けることができるため、今までと同じように無期限に雇用することも可能な仕組みになっています。
改正は誰のため?都合の良いように変えられてしまう法律

そもそも、古くからの日本的な雇用システムの中では、企業の根幹を担う労働力は正社員であり、派遣社員というのは特定の専門や能力が必要となる分野での特例的な人材であるはずでした。労働者派遣法が施行されてから約30年の間に、派遣労働者、並びに広義の非正規雇用者の数も右肩上がりとなり、「契約社員は企業の都合に振り回される不本意な労働形態」という考えが広まってしまったように感じます。もちろん、そうではない方々もいるとは思われますが、今回の法改正はそうした風潮に一層の拍車をかけるようなものではないでしょうか。
労働者を守るためにあるべき法律も、企業側の都合のいいように改変されていると思わずにはいられません。
- 参考 -
1. 専門26業務とは
2. 厚生労働省HP

![改正労働者派遣法の施行を考える:r000015000031 | PARAFT [パラフト]](/files/alias_m1/000015000031/59_0.jpg)
迫る「ハケンの窮地」
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迫る「ハケンの窮地」
WRITER
ライター
白川達朗
日本的な年功序列、終身雇用制度は崩れたと言われても、いまだに正社員が良しとされる社会通念はしっかりと残ったままです。そして、正社員でも慢性的な長時間労働やサービス残業を強いられたり、有給休暇の未取得など、必ずしも理想的とはいえない労働条件の企業も多いのが実態です。さらには、非正規雇用になっても、長期的な雇用形態をとるのが難しいとなれば、どんな働き方を模索すればよいのやら。多様な働き方が認められてしかるべきなのに、本法律の改正は時代に逆行しているように感じてしまいます。