働き方の記事2015.10.26
働かない働きアリに学ぶ
組織には“働かない人間”が必要不可欠?
keyword: 働き方 マーケティング 企業 仕事 労働力
2015.10.26 文章 / 白川達朗
パレートの法則に学ぶ!チームには "働かない"働きアリがいる?

パレートの法則は、ビジネスシーンに置き換えると以下のような例が挙げられます。
・全商品のうち、上位20%の商品が売上げの80%を占める
・全顧客のうち、上位20%の顧客が売上げの80%を占める
パレートの法則自体は、もともと経済環境における事例から見出されたもので、「働きアリの一集団のうち2割が食べ物の8割を集めてくるようになっている」なんていう言い回しにも応用されています。しかし、最近ではこうした働きアリの集団の中でも “働かない" 働きアリ達に注目が集められています。
生物学者のこれまでの研究により、ある瞬間のアリの巣の中では「7割近く」のアリが何もしていないこと、また長期的に観察を続けてもおよそ2割のアリはほとんど働かないことが分かっており、さらには一生涯ほとんど働いていると言えないようなアリまでいるという研究報告まで出ています。米国学会誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」9月号では、働きアリはなんと全体のわずか2.6%しかいないという報告がされています。
“働かない"働きアリはなぜ生まれる?

働かなかったら周りのアリに怒られてしまうではないか! サボって働かないなんてけしからん! と思った人も多いのではないのでしょうか。しかし、アリの世界において「働かない」というのは、「わざとサボっている」ことと必ずしも同義ではないのです。
アリの世界では、ある “タスク"(例:餌を運ぶ)が発生した際に、そのタスクに敏感に反応して率先して働くアリがいる一方で、反応が鈍感なアリもいるのです。この反応とは、人間でいえば、部屋がどの程度汚くなったら掃除を始めるかが人によって違うということに似ています。人によって汚れに対する反応度が違うので、反応の早い人間のほうが必然的に掃除をする回数が多くなるのと同じように、“タスク" に対する反応が早いアリのほうが他のアリより頻繁に働くということになります。
つまり、アリの世界では、人間の企業社会のように上から下へ、もしくは下から上へと言った階層的な情報伝達のシステムがあるわけでも、誰かに仕事をするよう頼まれるわけでもないのです。
長期的な組織の存続に欠かせない、“働かない" メンバー

アリには、臨機応変に人員が足りていないタスクを自発的に手伝う習性があると言われています。そのため、“働かない"働きアリも、組織全体の緊急の事態には動き出すと考えられており予備の労働力として重要な役割を担っているとも言えます。
そもそも、アリも生物なわけですから働けば疲れを感じるし、連日終電まで働くサラリーマンしかり、働きすぎれば過労になることもありえます。全力で働く者がいる一方で、余力を残している者がいることによって、組織は全体として緊急の事態に備えうると考えられます。
人間の世界でいえば、全従業員を働かせ続けて、事業をまわしているような企業は、緊急の事態が来たら、労働力の不足により業務が回らなくなりかねません。常にフルパワーで働くような人間だけの集まりよりも、予備の労働力としての“働かない人間"がいる組織のほうが長期的にはうまく機能するのかもしれませんね。
参考・出典
▼ パレートの法則とは:コトバンク
▼ パレートの法則とは:マーケティング用語 Weblio辞書
▼ 米国学会誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」

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働かない働きアリに学ぶ
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働かない働きアリに学ぶ
WRITER
ライター
白川達朗
私は比較的きれい好きなので部屋にほこりがたまる前にすぐ掃除をしてしまいます。と言うことは仕事に対する反応度が比較的高いのか、と言われればそうでもなく、仕事を締め切りから逆算してぎりぎりまで寝かせておくことも多々あります。アリの世界で見つかった”働かない”働きアリの法則も、ヒトの世界では上手くいくかどうかはまだ未知数のようです。