派遣の記事2015.11.05
20年間で2倍に!
非正規雇用が4割を占める日本の「働き方」、これからどこへ向かうのか?
2015.11.05 文章 / 白川達朗
労働者の約4割が「非正規雇用」という実態

昨日発表され話題になった非正規雇用者の割合は、80年代には10%台、景気の悪化が進む90年代に20%を超え、2000年を過ぎてからは30%台半ばを推移してきました。非正規雇用者の割合が増えた理由としては、少子化傾向を受けた若年層労働者の減少や、高齢労働者の定年退職や団塊の世代が退職を迎えたことを受けて、相対的に表れた結果だと考えることもできます。
しかしながら、事実として非正規雇用者の絶対数も確実に増加の一途をたどっていることも、見逃してはなりません。なぜなら、1995年には1000万人程度だった非正規雇用者数は、2015年現在は2000万人近くにまで達し、この20年間で倍増しているからです。
非正規雇用ってそもそも何? 正社員とは何がちがうの?

非正規雇用(非正社員)と言っても、その実態をひとくくりに説明することは、実はかなり難しいのです。まずは、彼らと対する立場とされる雇用形態の「正規雇用(正社員)」について考えてみましょう。
正規雇用とは、一般的に「無期雇用」「直接雇用」「フルタイム雇用」といった3つの条件を満たす雇用形態とされています。それぞれの内容と、非正規雇用との違いを見ていきます。
まず、「無期雇用」とはその名の通り“雇用期間に制限がない"ということ。例えば、1年契約や3年契約のように使用期間が決まっているわけではなく、労働者が希望する限り永久的に(定年まで)働き続けることができるというものです。もちろん、雇用契約に反した場合や、労働者が働き続けることができなくなった場合は契約破棄や解雇の対象になりますが、きちんと働いてさえいれば、安定して定年まで働き続けることができるというものです。
次に、「直接雇用」とは“雇用主が労働者と直接契約を交わして、使用者が労働者に対して労働対価を支払う"という意味です。ちょっとややこしいですね。すなわち、会社と働く人の間を仲介するものがない形態を指します。これに対して、派遣労働者は間に「派遣会社」を介していますから、間接雇用と言う形態になります。派遣元企業が労働者と契約を交わし、労働者は指定された派遣先の企業で働くものの、派遣された先の企業と直接的な雇用契約を結んでいるわけではないからです。
最後に、「フルタイム雇用」とは、“労働者が雇用された事業所で定める就業(労働)時間(9〜17時など)の勤務を行う"というものです。フルタイム雇用でない雇用形態は「パートタイム」と呼ばれます。 つまり、“非"正規雇用とは上記3つの条件を1つでも満たさない労働形態のすべてとなり、そのパターンが複数あることは、容易に想像できますね。例えば、雇用主と無期雇用の直接契約を結び、事業者の定める就業時間の朝9時から夕方5時まで毎日働いた場合はどうでしょう。この場合は「派遣労働者」ではなく、「契約社員」と呼ばれることにならないでしょうか。
非正規雇用は、悪なのか?

今回のように、非正規雇用が増加したというニュースが流れると「非正規雇用は良くない!」「非正規雇用の増加を食い止めろ!」という議論になりがちですが、これは必ずしも正しいとは限りません。なぜなら、非正規雇用と言うのはあくまで、正規雇用“ではない"雇用形態と言う意味であり、そうした働き方を求める労働者がいることも事実だからです。
例えば、正社員としてA企業に勤める女性が、育児のためにフルタイムで働けなくなったとします。育児にもっと時間をかけたいと考えた彼女が、時短勤務が許される非正規雇用へと雇用形態を変えた場合、彼女にとって非正規雇用は悪でしょうか?
彼女は正社員という肩書きよりも、ライフスタイルにあった働き方ができることを望むのではないでしょうか。 非正規雇用が問題となるのは、ひとつに「正社員として働きたいと望んでいるのにもかかわらず、不本意に非正社員として働いている人がいる」からです。今回の調査でも、不本意に非正規雇用として働いていると回答した人は全体の18.1%、働き盛りの25~34歳にいたっては28.2%という結果が出ています。 また、非正社員として契約を交わしている労働者に対して、正社員と同じような労働を強制しながらも、正社員と同程度の労働対価を支払わない雇用主がいるということも大きく問題となる原因でしょう。
今回の厚生労働省による調査結果は、日本の働き方の未来を考えるよい材料となるのではと思います。正規社員の3つの条件が、多くの労働者を苦しめていることもまた事実ですから、「正規社員」「非正規社員」という呼び名でなく、また新しい働き方の枠組みがつくられることが望まれます。
参考・出典
▼ 厚生労働省「雇用の構造に関する実態調査(就業形態の多様化に関する総合実態調査)」
▼ 安藤至大「これだけは知っておきたい働き方の教科書」ちくま新書

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WRITER
ライター
白川達朗
プロ野球選手は球団と年間契約を結んでいる(無期雇用ではない)ため、非正規雇用の労働者です。もし彼らが全員正規雇用になったら、選手として生涯一つの球団でしかプレーすることができません。非正規雇用があるおかげで、プロ野球界(労働市場)では選手の移籍(流動性)が進むのですね。