労働時間の記事2016.02.08
働きすぎる日本人労働時間2割減
「働き方の変化」とは?
keyword: 労働時間 残業 サービス残業 アメリカ 非正規
2016.02.08 文章 / 白川達朗
日本人の労働時間は『減少』した?

出典 Shocked that I'm quitting Facebook 26/365 / rafiqs
「働きすぎの日本人」、これはなにも外国人だけが抱くイメージではなく、日本人自身もある程度自覚しているものではないでしょうか。それでは海外ではもっと楽して働いているのかと言うとそうではありません。ニューヨークやロンドンに代表される世界のビジネスの中心地では、昼夜問わず働くビジネスマンもいます。
OECD(経済協力開発機構)の発表した統計データによると、1970~1980年代後半ごろまでの日本人労働者1人あたりの労働時間は、総じて年間2,100時間前後。これをアメリカ、イギリス、カナダの1800時間程度と比較すると、やはり日本人は「働きすぎ」のようです。
しかしその後、1980年代末からの週休2日制の導入を受け2012年時点で発表された調査結果では、総じて1,745時間。そう、数値だけを見ると日本人の労働時間は『総じて減少した』のです。
しかし働く人々の労働時間を把握する上では、この「総じて」と言うのが調査を複雑にする原因となっています。
「総じて」の裏に見える、働き方の変化

1980年代末までは、日本人の年間労働時間は欧米各国をはるかに上回っていましたが、2000年以降は総じて、アメリカやカナダと同水準に落ち着いています。しかしここで気をつけたいのが『総じて』というところ。先ほど言った通り「総じて」日本人の労働時間が減っていると言う事実を示しているだけに過ぎません。
つまり、朝から晩まで働く正規雇用の社員も、パートタイムで働く非正規雇用の社員も、すべてを含んだ数字を見た結果だということです。これでは、1980年代から一貫してパートタイム雇用者の割合が増え続けている日本では、全体の総和として労働時間が減少しているという結果が出てしまうのは当然のこと。
さらには、この調査の回答は各事業所から得ているため、残業代が出ない管理職の時間外労働や、サービス残業による時間外労働はもちろんカウントされていません。これでは、そもそも時間外労働と言う考え自体が浸透していないような外国と比べることは、非常に難しいからです。
実は、日本人の労働時間自体は以前からあまり変わっていない

こうした点をふまえ、各事業所ではなく労働者個人から回答を得たうえで、労働者の雇用形態を分けて分析を加えた経済学者の大規模調査があります(※参考文献)。この調査では日本人の労働時間の実態について、大まかに以下のことが示されています。
▼ フルタイム雇用者の平均労働時間は25年前(1980年代末、OECDの調査では、年間労働時間がおよそ2100時間前後とされていた時期)と、現在とではほとんど変化していない。
▼ 全体の労働時間が減ったのは、パートタイム労働者の増加による影響が大きい。
▼ 時短政策(週休2日制)の導入により土日の労働時間は大きく減少した反面、平日(月〜金)の労働時間が増加した。
▼ 平日の労働時間が伸びた分、睡眠時間が削られている。
官公庁や国際機関の調査が話題に上がることが多いものの、こういった学者による調査結果はそれほど世の中に知れ渡っていません。上記で紹介したような詳細な調査の結果によると、実は日本人の年間労働時間は2~30年前から大きく変化していないと言えそうです。
2016年はまさに「働き方改革」の年。政府が主体となって各制度改革を進める動きが活発です。特に注目の集まる労働時間制度ですが、大切なのは「総じて」労働時間が変化することではなく、個々人の希望する働き方をきちんと実現できるよう、仕組みを整えることではないでしょうか。
以前と比べてこの数十年の間に働く曜日や雇用体系などは大きく変化し、今後も人々の働き方は変わっていくはずです。
【参考】
・山本勲、黒田祥子『労働時間の経済分析 超高齢社会の働き方を展望する』日本経済新聞出版社、2014/第一部 日本人の働き方 p10-40より

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働きすぎる日本人労働時間2割減
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働きすぎる日本人労働時間2割減
WRITER
ライター
白川達朗
日本人の労働時間はさらに長くなるのか、それとも短くなるのか。これからの30年での日本人の働き方の変化を予想してみるのも面白いかもしれません。