サテライトオフィスの記事2019.08.06
働き方を変える新オフィス
活用企業が増えているサテライトオフィスとは。支社との違いは?
keyword: サテライトオフィス 支社 地方 リモートワーク 働き方
2019.08.06 文章 / PARAFT編集部
多様な働き方を実現するサテライトオフィス
サテライトオフィスとは、企業または団体の本拠から離れた所に設置されたオフィスのこと。本社や支社といった通常のオフィスとは別に、郊外や地方、あるいは都心に開設するオフィスを「サテライトオフィス」と言います。
従業員が通勤混雑を避けたり、移動時間を短縮したりするために、遠隔勤務するための通信設備などを備えたオフィスです。本拠のオフィスを中心に、衛星(=サテライト)のように存在するオフィスという意味でサテライトオフィスと名づけられました。
▼サテライトオフィス・立地別の分類
サテライトオフィスはその立地で大きく3つに分類されています。
① 都市型サテライトオフィス
営業活動など、移動中の作業拠点として活用する目的での設置・利用が増えています。地方や郊外に本拠がある場合に、都心での活動拠点として小さなオフィスを設置されているケース(例:地方自治体の東京オフィス)もこの中に含まれます。
② 郊外型サテライトオフィス
郊外のベッドタウンや都心のオフィスまでの間に設置し、周辺に住む従業員が利用することを目的としたオフィス。情報セキュリティの高い環境でないと就業できない業種で、テレワーク拠点として利用される事例が増えています。
③ 地方型サテライトオフィス
東京や大阪といった都市部の企業が地方に構えるオフィスです。
近年は地方自治体のオフィス誘致が盛んで、「おためしサテライトオフィス」という総務省の支援事業が2016年から実施されています。都会とは全く違う環境で働く選択肢を持てるのが、地方型サテライトオフィスの魅力です。
▼サテライトオフィス・契約の違い
① 専用型サテライトオフィス
1つの企業が自社専用で設置するサテライトオフィスです。労務やセキュリティといった管理がしやすい一方で、運営・設置のコストが大きな課題となります。
② 共用型サテライトオフィス
複数の企業や個人が共同で利用するサテライトオフィスです。最近増えているコワーキングスペースやシェアオフィスがこのタイプにあたります。セキュリティ面に課題はあるものの、利用者同士の交流ができたり、イベントが開かれたりと、その可能性はどんどん広がっています。
▼ サテライトオフィスと支社・支店の違い
サテライトオフィスと支社・支店は、どちらも本社以外の働く場所という点では同じです。設置の目的に違いがあります。
サテライトオフィスは本社以外でも働ける場所をつくるのが目的です。ところが支社・支店はその場所でしかできない仕事をするのが目的となります。
支社・支店の場合は、働き手がその環境を選ぶというよりは、業務命令として赴任する(もしくは現地採用される)ケースがほとんど。出張でやってきた本社の社員がワーキングスペースとして利用することはあっても、そのために設置されているわけではないのです。
サテライトオフィスのメリットとデメリット
▼ サテライトオフィスのメリット5つ
1.生産性の向上
サテライトオフィスを導入することで、従業員の移動時間を短縮できたり、通勤混雑を回避したりすることが可能に。地方型のサテライトオフィスであれば、環境の違い(転地効果)から新たな発想が生まれるかもしれません。
2.BCP対策
大規模災害の発生時にどう事業継続するか。各社で取り組まれているBCP対策でも、サテライトオフィスは欠かせない手段となっています。本社から離れた立地のサテライトオフィスでも問題なく執務できれば、事業継続の可能性が高まります。
3.コスト削減
都心に広いオフィスを構えると、その賃料や維持・管理コストは高額に。一部を地方や郊外に移す、あるいはシェアオフィスを借りることによって、オフィス関連のコスト削減が期待できます。
4.人的ネットワーク確立とアイディア創出
共用のサテライトオフィス利用には、社外人材のネットワークを築きたいという動機もよく聞かれます。顧客でも同僚でもない、ゆるやかな関係の人たちと空間を共にすることで刺激を受け、思わぬアイディアが生まれるかもしれません。
5.人材確保
育児や介護、その他さまざまな事情で、地方や郊外から離れられないけれど、スキルを持つ有能な人材。こうした人は意外と多いものです。本社への出社が条件だったら採用ができなかったそうした人材を、サテライトオフィスを設けることで採用できるかもしれません。
さまざまなメリットのあるサテライトオフィス。一方でデメリットもあります。
▼ サテライトオフィスのデメリット3つ
1.コミュニケーションの難しさ
利用・導入する企業の中から多く指摘されているのは、コミュニケーションの問題です。
本来のオフィスと離れた場所で執務することから、オンラインでのコミュニケーションが前提となります。コミュニケーションがうまくいかなくなると業務に支障が生じるもの。チャットツールの導入や、本来のオフィスに出社したときのコミュニケーションでカバーするなど、対策は複数考えられますが、いずれにせよサテライトオフィスを活用する上で考慮すべきポイントには違いありません。
2.公平感の難しさ
サテライトオフィスをどこに設置するのかも、重要な問題です。特に郊外型サテライトオフィスの場合、拠点が少なかったり、地域が偏っていたりすると、不公平感が生まれる可能性は否めません。首都圏に広くオフィススペースを展開する事業者との提携を考えるなど、何らかの対策が求められます。
3.導入・管理の難しさ
サテライトオフィスを導入する際には、オフィスのコストに加えて、セキュリティ対策や什器、ルールの整備など、さまざまな投資が必要です。導入後も、そこで働く社員をどのようにマネージするか、維持管理の点など、課題はあります。こうした点は、先行して導入する企業の事例を参考にすると、ずいぶんハードルが低くなるはずです。
サテライトオフィスの活用事例
▼ 郊外型・都心型サテライトオフィスの事例:「どこでもオフィス」を導入する味の素
味の素では、2017年4月から「どこでもオフィス」という制度を導入しています。育児や介護など時間に制約のある社員でも、働く時間を捻出して成果を生み出せるようにする目的で、会社が契約するサテライトオフィスや自宅で週4日までテレワークができるというものです。運用が始まって、介護と両立する社員が離職せずに済んだ事例も生まれたそう。
▼ 地方型サテライトオフィスの事例:クラウド名刺管理サービスを提供するSansanが、徳島県神山町で第一号のサテライトオフィスを開設
米国・シリコンバレーで目の当たりにした、クリエイターたちの時間や場所にとらわれずに自由に仕事に打ち込む姿が忘れられなかったというSansan・創業者の寺田氏。社員の働き方を変えて、クリエイティビティを発揮できる仕事環境を提供しようと、徳島県神山町で初めてのサテライトオフィスを開設しました。職住近接で集中できる環境に、生産性向上やリフレッシュ効果を実感しているといいます。
▼ 郊外型・都心型サテライトオフィスの事例:りそな銀行が支店の余剰スペースを利用したサテライトオフィス導入へ
希望する行員が自宅近くで働けるように、既存支店のスペースを活用したサテライトオフィスを導入したりそな銀行。業務のデジタル化などで生まれた支店の余剰スペースを、サテライトオフィスとして活用。将来的には東西で20拠点ほどを目指します。20拠点が実現すると、全行員の6~7割が自宅の最寄り駅からサテライトオフィスまで15分程度で通勤できるそう。
▼ サテライトオフィスを提供する事業も
こうした企業独自の取り組みが続々と進む一方で、サテライトオフィスとして利用できるコワーキングスペースを提供する事業も生まれています。代表的なところでは、人的ネットワークにコンセプトを置く『WeWork』や東急電鉄が駅に展開する『NewWork』などがあります。
サテライトオフィスにどんな目的を見出しているのかは、企業によっても異なります。自宅に比べ、各段に整った環境で働けるサテライトオフィスの可能性は、まだまだ広がっていきそうです。

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PARAFT編集部
既存の不動産スペースをどう活用し、移動時間や移動コストをどれだけ減らせるか。こうした観点から、サテライトオフィスの開発や活用方法はまだまだ広がっていきそうです。これまでのオフィスでは望めなかった、社外の人的ネットワークづくりやクリエイティブを刺激する環境。こうしたサテライトオフィスの機能にも、さらに注目が集まっていきそうですね。