データサイエンティストの記事2016.10.21
ビックデータから社会を読み解く
AI導入も期待の「データサイエンティスト」に必要なスキルとは
keyword: データサイエンティスト 解析 ビックデータ AI エンジニア
2016.10.21 文章 / PARAFT編集部
無限の情報を”科学する”データサイエンス
出典:PARAFT編集部
この「ビッグデータ」、始まりは2001年にMETA Group(現、Gartner)が発表したリサーチレポートと言われています。META Groupはこのレポートの中で、データ量の増大による課題と機会を「量・速度・多様性」の3つの側面から捉え、これらが増大した情報の集合体を「ビッグデータ」と定義したのです。そこから、FacebookやLinkedInといった情報を扱うサービスの成長とともに「疑問の発見→ 仮説の設定→ 結論」という作業がくり返されたことで、この領域は洗練されていきました。今では、WebやSNSだけでなく、書籍や雑誌等さまざまな媒体の情報と、ITを通じて発見・利用できるようになった“情報の集合体”を指す言葉とされています。
今回のテーマである「データサイエンス(Data Science)」は、これら莫大なデータを活用して新たな価値を生み出すための分野です。しかしビッグデータの活用は、3段階の課題を解決しなければならないとされてきました。
1つ目は、大量かつ多様なデータ処理技術の開発です。膨大なデータには文字列以外に音声や動画も含まれており、その形式は多種多様です。まず、第一関門とされたのは、各データの特徴から適切な形式で情報を抽出することでした。
2つ目は、処理能力向上と表現方法の工夫です。データの属性、情報間にある関係性や規則性を解析していく処理能力をどれだけ上げられるか、そしてそれらをどのように表現するか。そうした技術的課題の解決次のステップです。
3つ目は、上記のような技術的課題を解決した先にある、活用方法についての課題です。データ処理の目的は、それらを使いこなした先にある“革新”です。どのような方法で、何に生かすかを考える「データサイエンティスト」の育成と獲得もまた、ここ数年でニーズの高まりを見せています。
「データサイエンティスト」も、問題解決型へ 変化する人材ニーズ
それはなぜか? 近年、データ収集システムやデータ分析ツールの開発が進み、システムを作るエンジニア的要素よりは、ビジネスへの実用性に強い人材が求められるようになったからです。
ビッグデータ黎明期には、そのアルゴリズムを処理するのに統計解析言語などを用いる必要があり、その工程も複雑でした。しかし今では、多くのアルゴリズムが解明され、データの入出力処理能力が飛躍的に進歩しています。これにより解析自体の時間が短縮され、誰もが容易かつリアルタイムに必要な情報を入手することが可能となりました。つまり、一般のビジネスマンでも統計学や情報処理スキルに長けていれば、データサイエンティストになれる時代になったということです。
「以前のデータサイエンティストに必要なスキルは3つあった」と、IT大手のオラクル社プロダクト・マネジメント担当は述べています。いわく「ビジネスに精通していること」「IT部門の統計解析ツールを使いこなせるプログラマ型」「スタートアップ企業やなどで必要な、仮説や数理モデルの構築ができるアルゴリズムの専門家」というものです。
「現在、これらすべてを持っている人材を、企業の多くは必要としていません。ツールが使いやすくなるにつれ、高度に専門的な知識は不要になったのです。また『データ視覚化ツール』の誕生も大きい。このツールによって、専門スキルのないビジネス・パーソンでも、自社で保有する膨大なデータの、パターン分析まで容易にできるようになりました。今や、数学や統計学の博士号が必要だった時代は去ったのです」
データサイエンティストと聞くと、ITに強い技術者を思い描く人は多かったのはではないでしょうか。しかし今求められているのは、統計学の経験やビジネス感覚です。ビジネスである限り「費用対効果」を確実に計測できることもマストでしょう。
データサイエンティストに適した人材として近年、そのデータ分析力の高さとそれを実践化していくことに長けているという側面から、特に、化学や物理などを専門とする研究者にも注目が集まっています。
黎明期のデータサイエンス、さまざまな分野からの横断的アプローチがカギに
出典:Freepik
日本でこの分野をリードするデータサイエンティスト協会の定義をもとにしたレポートによれば、そのポイントは「課題発見力」「交渉力」「解決した課題による効果を的確に測定できる力」の3つだそう。
意外なのは「交渉力」ではないでしょうか。データサイエンティストが何かを発見し解析を進めようとしても、多くの場合、1人では完結しません。社内外のメンバーを巻き込みデータ分析や事業化を行なうため、人を相手にやりとりする実践的なコミュニケーション力は必要不可欠なのです。さらには、ビジネスへの活用法を思いついても、その効果や意義を経営層にプレゼンできなければ意味がありません。説明能力やデータをビジュアル化するスキルも必要でしょう。
とはいえ、これらすべてを1人が持ち合わせるのは難しいもの。まずは、データサイエンス入門でもよく挙げられる統計学のスキル、仕組みづくりの基本となるコンピュータサイエンスの知識、そして数学や化学、物理といった学術分野の専門知識を意識すると良さそうです。もしくは、最近では理数系のバックグラウンドを持たない文系の人でも、マーケティングの視点からデータ分析に取り組むケースもあるようです。この場合は、ビジネスへの応用を前提にしているので、事業の成長へダイレクトに影響を与えられそうですね。
もちろん、コミュニケーション能力などパーソナリティーに関する部分や、直観力などを養うトレーニングなど、多方面から自己の実力を高める努力は、忘れずにしていきたいところです。
来る11月1日、総務省がデータサイエンティスト養成を目的としたオンライン講座を開始します。あなたのビジネスにも、何らかの形で変革をもたらすかもしれない「データサイエンス」の概念と「データサイエンティスト」のスキル。この機会に、知識を深めてみてはいかがでしょうか。

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大量のデータを分析して傾向を見つけ、事業成長のメリットをもたらすデータサイエンティストは、ますます注目を浴びていくことでしょう。これからのイノベーションに大きなインパクトを与え、あらゆる分野でのデータ革新に貢献していくはずです。