AIの記事2016.11.17
社会をどう変える?人工知能
ホワイトハウスのレポートからAIの仕事・教育への影響を探る
2016.11.17 文章 / 藤川理絵
AIには、さまざまな種類・レベルがある。その違いとは?
出典:Dreamstime
▼狭義のAI(narrow AI)
Amazonの商品レコメンド、戦略ゲーム、自動運転車、画像認識ソフトなどでに使われており、私たちの生活の中で、すでに親しみのある技術です。
▼広義のAI(general AI)
つながり合った多岐にわたる作業に適用できるAI技術。狭義のAIからとてつもなく進歩したものであるため、まだまだ実用化にはほど遠いという意見もあります。
▼機械学習(Machine Learning)
ホワイトハウスのレポートでの定義によると、AIの中でも最も重要なアプリケーションのひとつとされています。大量のデータ・セットから統計的にパターンやルールを導き出して、将来の予測を立てるというものです。
従来のシステムが行える作業は、コードにより定義づけられた一定の規則に則って行われ、人間が行う意思決定を”模倣”するにすぎませんでした。しかし機械学習では、整理されていないランダムなデータを読み込んでデータの構造化を図り、パターンやルールをを探しあて、それに従って作業を進めていきます。
オンライン上でのハッキングを例にすると、過去の大量のデータから「これはハッキングの可能性が高い」と判断し得る規則性を導き出し、その規則に従ってハッキングを防止することが可能となるのだそうです。
▼ディープラーニング(Deep Learning)
これは優秀な人間の頭脳そのもので、機械学習よりもさらに高度です。大量かつ多様なデータ・セットからデータの構造化を図るだけでなく、さらにそれらを組み合わせて様々な可能性を検証し、新たな価値を導き出します。しかも何百という人間が取りかかるには気が遠くなるほど複雑なデータを処理することができるというのです。
AIがもたらす恩恵と、仕事に及ぼす影響とは
出典:Freepik
▼自動車社会
自動運転技術が上がることで道路の安全性が上がり、身体が不自由な人やお年寄りが行動しやすくなります。
▼建築物のスマート化
省エネやビル管理の効率化が進むでしょう。
▼ヘルスケア
健康状態やそれに合った医薬品の分析技術が進むことで長寿になります。また人生を通じて、健康面でより質の高い人生を送れるようになるでしょう。
▼教育
ロボットやMOOCsのような学習管理システムが普及し、地域による学習機会の不平等が解消に向かいます。また、個人のレベルやニーズに応じてコンテンツを柔軟に選択できる環境が整うでしょう。
では、AIの発達に伴って最も懸念されている、「AIが人間の仕事を奪う」という点はどうでしょうか。一般的には、”非直感的”な仕事からAIに取って替わられると言われています。
▼AIに代替される可能性が低い仕事
テクノロジーの分野で高度なスキルを有する職種では、自分のスキル磨き続け、AIと共存して仕事を行うことができると言われています。
また、あまり高度なスキルを要求されない職種も、多くの業務が定型化され簡単には自動化も進まずAIに置き換えられずにすむ見込みです。
▼AIに代替される可能性が高い仕事
しかし、これらの中間層への影響は最も大きいと言われています。例えば、高い人件費に関わらずルーチン業務も多い工場の仕事、会計士などのホワイトカラーの仕事、レントゲン技師などです。
▼人間がAIに勝る可能性が高い仕事
教育や介護など人間同士の相互のやりとりや察する力が求められる仕事や、人間の創造力と判断力が必要とされるサービスや芸術などもAIへの移行は難しいとされています。
ちなみに、スタンフォード大学の研究では、ビジネス社会の構造も変化するとされています。具体的には、グローバルにビジネスを展開するために、何千人もの従業員を抱える大企業である必要がなくなり、雇用の在り方も変わるとのことです。また、AIの発達によって新たな仕事が生み出される可能性も高く、こういった変化に対する適応力が重要だとしています。
AIの発達が進んだ未来社会へ、スムーズに移行するためにはどうすればよいのか?
出典:Freepik
職業の有無に関わらず給付される”ベーシックインカム”制度の導入など新たなセーフティネットの用意、「働くこと」そのものの再定義、すべての人が参加し貢献し合える”つながりあった”社会というパラダイムの形成など、従来の枠を超えた発想が必要だと言及しました。
中でも、教育システムの再構築は非常に重要です。テクノロジーの進歩は非常に速く、働きだしてからも継続して知識やスキルを磨けば、職を失う脅威から逃れられるとしています。教育と仕事はより密接になり将来的には統合されることでしょう。
最後に特筆すべきは、特にテクノロジーの分野において、性別上また民族間の多様性が全く進んでいないという問題です。
例えば、アメリカでコンピューター・サイエンスを学んだ女性の割合は、1984年には37%でしたが今日では18%に半減しています。昨年開催されたAIの最も重要なカンファレンスでは、参加者における女性が占める割合は13.7%に過ぎなかったとの報告もあります。
AIという技術を、一部の人がより豊かになるためのものにしないで、人類全体の恩恵として享受するためには、ダイバーシティの推進は最も重要なポイントなのです。

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社会をどう変える?人工知能
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社会をどう変える?人工知能
WRITER
編集・ライター
藤川理絵
「AIにどんな情報を与えてどのように育てるか」は、頭の柔らかい子どもを育てるようなデリケートな問題です。最先端技術の開発者にはなれないにしても、私たちひとりひとりがその進化を自分事として見張るべきです。そして、AIとのより良い関わり方を問い続けることで、AIを脅威ではなく恩恵にできるのではないでしょうか。