ユースバルジの記事2016.12.13
あなたのライバルは誰ですか
「ライバルは昨日の自分」 なんていう事を言っている場合●●
keyword: ユースバルジ グローバリゼーション 雇用 ゆとり世代 人口
2016.12.13 文章 / 千歳敬雄
30歳手前の風景はどんな感じでしたか?
出典:Freepik
普通に四年生大学を卒業して就職した方は、社会に出て5-7年くらいは経過している頃ですね。大人の世界の理不尽さにも少しだけ慣れてきて、社会の垢に少し染まりはじめた頃でしょうか。
仕事に対する自意識や責任感も強くなってきて、30代前半の駄目な先輩と使える先輩を見比べながら、もはや他人事では済ませられない30代という「その内やってくる年代」にリアリティを感じる頃なのでは無いでしょうか? 仕事が出来るとされる側に立つべく異業種交流とか自己啓発の為の勉強会などに積極的に参加したりされている方もなかにはいらっしゃる事と思います。
自分の事を振り返ると、学生気分も抜けて、社会人として後輩も出来てきて後には戻れない感じがする30代の入り口で、少しの焦りと、楽しそうかもな30代って、という高揚感がないまぜになっていた事を覚えています。ぜひ、30歳を迎える前に、どんな40歳を目指すのかまでイメージしておくことをお勧めします。
みなさんが40歳になるのは2025年あたりですが、その頃には世界の人口は83億人程度まで増加(今は74億人程度) して、医療技術の進歩と教育の普及によって全人口の35%程度にあたる30億人がミドルクラスに含まれるようになるという予測も出ています。人口は都市部に集まりやすくなり、49億人程度の人々が都市部で生活するようになるので、新たな都市がアジアやアフリカで産まれると共に、水や食料需要の増加は今以上に切実な課題になると言われています。こうした社会を支えるテクノロジーはロボティクスによる仕事の代替や自動運転の普及、太陽光発電が火力電力なみに低コスト化するなどの見通しが出ています。利便性の向上がもたらすものと奪うものがより具体的になっているこの頃には、進化したAIと人の間でロボットの三原則が締結される、なんて事になっている頃かも知れません。
そんな未来を迎えるにあたって、一つ質問です。
知っているつもりのことを少し深く突っ込まれると戸惑うことはありませんか?例えば、日本で一番高い山を聞かれたら大抵の人が答えられますが、日本で二番目に高い山を聞かれて答えられる人はあまりいません。(答えはこのコラムの最後に。) それと同じように、日本の人口は何となく肌感覚としてお分かりかと思いますが●●
ユースバルジが世界を動かす
0歳から99歳までを10歳区切りで分けてみると、0-40歳の今とこれからの社会の主役である世代が、日本では国民の40%であるのに対して、世界全体では65%がこの世代に含まれています。
石を投げれば老人に当たるのが日本だとすれば、石を投げれば40歳以下の若い世代に当たるのが世界の人口分布の姿な訳です。少子化・高齢化が日常的に語られる日本にいるとなかなか実感が湧かない話ですが、グローバルで見るとそれが現実です。
人口分布のピラミッドグラフを作成した時に外側に膨らんだ部分の事をバルジ (bulge = 膨らみ、出っ張り) と言います。世界の人口分布における若年層の増加は Youth Bulge と呼ばれています。このYouth Bulge は行き場を失った若者たちを量産する原因と言われており、これがテロ、内戦、ジェノサイドといった暴力に転換する事が研究によって明らかにされています。日本で育った皆さんにとってはにわかに信じ難い話かもしれませんが、世界では増えすぎた人口がもたらす様々な問題が顕在化しています。食糧難や移民の問題もこうしたYouth Bulgeと無関係ではありません。
さて、サラリーで生きていく会社員であれ、自分で会社を経営するにしても、一般的にライバルが少ないのは競争上有利に働くと考えられていますが、これは市場そのものが成長している場合の話です。市場を国家と言い換えてみたらどうなるでしょうか? 国力を示す分かりやすい指標としてGDPがあります。世界の名目GDPに占める国別の割合をThe World Bank が公開していますのでそちらを見てみると、2010年に8.4%を占めていた日本のGDPは2015年には5.6%まで低下しています。それでも単年度でみれば世界3位ですが、トレンドとして低下傾向にある事は否定できません。
厳しい競争環境の中で生き残った人と、国力が低下している国で何となく育った人が戦った場合にどちらが勝つか。何となく答えは明らかですよね。「井の中の蛙大海を知らず」ということわざが今の日本の若年層には当てはまってしまうのです。実際、日本国内にいる外国人労働者は2015年のデータで90.7万人います。これは年率で10%以上の伸びです。
競争なくして成長なし。もっと世界に目を向けてみよう!
今回のコラムで参考にしている、かつ、お勧めしたいのはこのあたりです。お時間のある時にどうぞ。
1.ニッセイ基礎研究所 中期経済見通し ( 2016-2026) http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=54100?site=nli
2.自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書) (著)グナル ハインゾーン/(訳)猪俣和夫
3.教育改革の幻想 (ちくま新書) / 苅谷 剛彦

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あなたのライバルは誰ですか
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あなたのライバルは誰ですか
WRITER
マーケター
千歳敬雄
30代は社会人として生き残る上でとても大事な10年間だと過ぎ去ってから強く思っています。次回は、すでに突入している人も、これから30代を迎える人にとってもきっと役に立つかもしれない英語と読書の話(どっちにするか未定)をしようと思います。それまで座して待つべし。 ※「日本で二番目に高い山」の答えは南アルプスの北岳 (3193.2m) <略歴>リゾートホテルで広告宣伝、イベント会社を経てIT業界へ。現在デジタルマーケティング界隈を中心に活動中。得意分野はグローバル企業のマーケティング戦略、顧客や市場との対話、組織論。