リクルートホールディングスの記事2017.03.30
マネジメントは管理から支援へ
「個別最適化」に挑みつづける覚悟|リクルートHD働き方変革推
keyword: リクルートホールディングス 働き方改革 リモートワーク フリーアドレス マネジメント
2017.03.30 文章 / 味志佳那子
「つくる・みなおす・かんがえる」で働き方変革
林:はい、現在は全社的にリモートワークも定着してきています。リモートワークの導入は、2015年4月に働き方変革プロジェクトを立ち上げてから段階的に進めてきました。試験導入時には、参加組織を対象に週2日以上の出社禁止をルールとして設けたり、リモートワーク実施前後にとったアンケートから良かった点や改善点を洗い出し次回試験時に活かすなど、徐々にリモートワークをスムーズに行える環境整備を進めてきました。
物理的に離れることでコミュニケーションが希薄になったり業務に支障が出るのではと不安視する声も、もちろんありました。ですが、中にはリモートワーク導入を経て「満員電車に乗り、長い時間をかけて毎日オフィスに頑張って通勤する働き方はもう考えられない」という姿勢に変わった社員もいます。やはり“やってみること”の大切さを感じましたね。
−−フリーアドレス制は2015年10月に導入されたとのことですが、その際の反応はいかがでしたか?
林:実は、リモートワークよりもフリーアドレスの方が社内の反対意見は多くありました。働く側からするとリモートワークは“自由”を選択できるイメージがありますが、フリーアドレスには“個人のスペースが取られる”という感覚があったようなんです。その後予定していた「社内データのクラウド化」も見据えて各自が抱えている資料を整理する機会にと、1人あたり引き出し1つ分サイズのロッカーを用意して、そこに入るだけの量に荷物を減らしてもらうようにしました。
そこで考えたのは、ただ「捨ててください」とアナウンスするのではなく、フリーアドレス化という変化も楽しんでもらいたいということ。引き出しの3段目奥なんかに入っている“過去の思い出”も、社内で楽しくシェアしながら景品ももらえる「捨て捨てキャンペーン」を実施しました。引き出しに眠っていた“それ面白い思い出だね”という投稿を募集したところ、入社当時の社内報やその昔飲み会を盛り上げた着ぐるみなんかも出てきました(笑)。
これからのマネージャーに求められるのは「管理」ではなく「支援」
林:私たちもそうですが、どんな制度でも段階的に進めていくことがポイントだと思います。リモートワークを、いきなり“どこで働いてもOK”とスタートするのではなく、まずは全員がオフィスに出社している状態でそれぞれが離れて仕事をしてみる。コミュニケーションは全てチャットで会議もオンライン、もし上手くいかなくても「やっぱり今から会議室に集合しよう」と声をかければ対面コミュニケーションに切り替えることもできるので、抵抗感なく始められます。気づくことがきっと多くあると思います。まずは、小さく始めて見る事が大事だと思います。
中には各自がバラバラの場所で働くことに「管理しづらいから」という理由で抵抗感を持つマネージャーもいるのですが、業務の進捗が気になったらチャットのディスカッションを見に行ったら良いだけのこと。オフラインで働く感覚のままでいるから“リモート=やっていることが見えない”と思うのかもしれませんが、チャットに議事録やメモを残すことには仕事を見える化するメリットがあります。実際に当社でもチャット活用で雑談量が増えたという声もあるので、ICTを上手く活用すればコミュニケーションをそれまで以上に活性化させることも可能だと思います。
−− マネージャー層を働き方改革にどう巻き込むかについて課題を抱える企業担当者の声も聞かれます。リクルート社ではどのような工夫をされていますか?
林:そうですね、働き方に多様性を持たせるにあたってマネージャー層をどう巻き込むかは重要な課題です。というのも、従来のように勤務時間や場所を管理してきた方法はすでに現代にそぐわなくなってきているからです。今後、セキュリティ情報や長時間労働の管理を除いて、今マネージャー層が担っている管理業務は「従業員の自律を“支援”する」という方針に変わっていくと思っています。
働き方に多様性をもたせることの本当の意味は、どうやったら自分のパフォーマンスがあがるのかを従業員が自分で認識して選べるようになること。優秀な人材の多くは管理されることを好まず、むしろ自分のやり方に任せてもらったときに高いパフォーマンスを発揮するものです。だから一人ひとりを信じて成果一本で評価するスタイルでやっていくほうが、起業家精神を持った自律的な人材が集まりやすくなると
ステップ・バイ・ステップで進める、働き方の個別最適化
林:私は「多様性」と「平等」を一緒に語ることはできないと思っています。皆に合う仕組みにしようとすると、大多数の人に当てはまっているとしても、全員にとってどこか合わない仕組みになる。働き方において、全体最適とは、誰にとっても最適ではないことと同義です。では何をすればよいかというと「個別最適」です。個人にとっての“最適”を突き詰めていくことが、皆にとっての平等につながると思っています。とは言え、一朝一夕にできることではないので、ステップバイステップで変えていこうというのが私たちの働き方変革です。
−− 最後に、リクルートの働き方変革のこれからについて教えてください。
林:働き方を多様化した先で考えなければいけないのは、それを会社の成長や利益にどうつなげていくかということ。リクルートの財産は「働く人たち」です。従業員のダイバーシティを尊重し、各自が最もパフォーマンスが上がるやりかたを選べるようになれば、もっともっと成長していけると思っています。今後は会社員でありながらもフリーランスのように働く人が増えるはずですし、これからの会社はそうした起業家精神を持った人材の集合体になっていくのだと思います。
【林宏昌さん 略歴】
2005年リクルート入社。住宅領域の新築マンション首都圏営業部に配属。1年目の目標達成率は50%だったが、当時の部長に「営業はお客様と商談している時が一番恰好いい。WIN-WINになることが出来る価値を提供して、商談が終わった後握手できる関係性をつくれ」とアドバイスを受け急成長。優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを入社4年目と5年目に連続受賞、6年目でマネジャーに。2015年4月より広報ブランド推進室 室長兼『働き方変革プロジェクト』プロジェクトリーダー。2016年4月よりワークスタイルイノベーション 働き方変革推進室 室長。

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編集者・ライター
味志佳那子
林さんが室長を務める働き方変革推進室が運営するWebサイトでは、まさに現在リクルート社で進行中のプロジェクトについて知ることができます。特にユニークなのは一度導入した制度を「みなおす」という視点。変革の過程を積極的に開示する姿勢からは、日本中をその変革の渦に巻き込もうとするエネルギーが感じられます。