副業の記事2017.04.14
副業マニュアルと就業規則規程例
人事必見!会社に利益をもたらす副業を導入しよう
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2017.04.14 文章 / 星野千枝
もっとも重要なのは、副業容認の範囲設定
出典:Pexels
副業を解禁すると、優秀な人材の流出を防ぐことができ、社外での経験を通じたインプットの機会が増えるので社員が成長し、それを仕事へのアウトプットにつなげていくことも期待できるので、実は会社にとって多くの利益があります。また、実際に副業する社員はもちろんのこと、副業しない社員まで含めて、自分になにができるか?と主体的に考えることにつながります。これは、下手な研修よりずっと社員の視野を広げる効果があります。
重要なのは、全面的に副業を認めるのではなく、どこまでの範囲で副業を認めるのか、副業につく際の要件や手順を会社にフィットする形に定めておくことです。なしくずしに都度判断で認めてしまうと、認めることのリスク判断がタイミングによってブレやすく、なぜAさんのケースがOKでBさんのケースがNGなのか?フラストレーションを生んでしまったり、トラブルが起きた時に責任の所在があいまいだったりということが起こります。
まずは、副業をどこまで認めるか人事内・会社内で検討しましょう。副業の種類としては、収入の不足を補うためのもの、社員の人生を豊かにするためのもの、仕事に活かすことを前提としたものにわけて考えるとよいでしょう。
副業の種類の洗い出しについては、コンビニでの深夜アルバイトやブログ運営などの広告収入は?趣味を生かしたカルチャースクールの講師や制作した手芸品などの販売は?個人で受託して行うサイト制作やシステム開発は?など、細かく考え出すとキリがないのですが、今まで社員から相談や要望があったものを中心に検討したり、社員にアンケートをとってそれをもとに考えたりすると、実態とかけ離れずに検討できるでしょう。
ただし、あくまでも本業は会社員なので、副業にあてる時間や収入は本業の2割程度までの範囲が適当です。3割を超えると本業のパフォーマンス低下が懸念されますので、どこまで認めるかを考える際に意識してください。
会社規程の見直しと運用ルールの策定で、副業解禁を実現する
出典:Pixabay
(就業規則規程例)
第〇条 副業の許可
1.社員が在籍のまま、他の事業の経営に参加あるいは労働を提供し、もしくは自ら事業を営み収入を得ようとする(以下、「副業」という)場合は、事前に会社の許可を得なければならない。許可を得ない場合はこれを禁止する。
2.副業の種類は、原則以下に限るものとする。
①~~会社ごとの具体内容を記載~~
②~~会社ごとの具体内容を記載~~
3.会社は、副業に就くことが会社の機密保持および会社における労務提供に悪影響を及ぼさないと判断できる場合に副業を許可する。判断に際し、副業に就くことを希望する社員は、原則として副業を開始しようとする日の1か月前までに、「副業許可申請書」を人事部に提出しなければならない。
4.会社は副業を許可する社員に対し、副業を認める期間及びその内容を明らかにした「副業許可条件通知書」を交付する。
副業の許可申請書には、副業の具体的な内容及び副業に要する時間、副業で得られる収入の見込み額等を記載してもらい、副業許可の判断材料にしましょう。労務提供に悪影響を及ぼさないという点については、入社したてで仕事を覚えることに注力してほしい社員はNGとすることや拘束時間の長い副業は健康管理の観点からNGとすることなど、事前に判断軸をある程度決めておくとよいでしょう。
副業の許可条件通知書には、1年以内の副業を認める期間、会社が認めた副業の内容や範囲、副業に就く際の条件などを記載しましょう。副業は期間を設けて許可し、継続する場合は状況報告と再申請を求める形にすることで副業の状況を把握することができます。
そのほか、副業解禁にあたり服務規程に就業時間中の副業を禁止する条文が入っているかあらためて確認したり、社内の機密保持規程や誓約書の記載内容を副業を認める条文と相反しないように変更したりすることをお勧めします。
副業を仕事に活かしてもらう体制を作る
出典:Pexels
まず、副業については解禁したら社内でできるだけオープンに取り扱うことが望ましいと考えます。副業に就く社員の健康に問題がないか、仕事のパフォーマンス低下につながっていないかは人事が勤怠や評価結果をもとに把握するだけでは実態がみえません。
現場の同僚や上司が状況を知っているほうが、体調等の変化を見逃しにくく、本業である会社の仕事もしっかりやらないと、という副業社員の意識にもつながります。
また、こそこそと副業をするような状態だと、副業が軌道に乗ってくると次のステップを求めて退職の道に進んでしまいやすいので注意が必要です。社内で周囲の理解や支援があれば、副業から得た学びや経験を仕事に活かす機会に恵まれやすく、活かすことでインプットしたものが社員の身につき、その社員はますます社内で活躍してくれることでしょう。
日々の仕事を通じて学べることには限界があり、外部の研修を活用して能力開発を行っても学んだことをすぐに実際の仕事に活かす機会がなかったり、実際の仕事に転用して考えるところで躓いたり、能力を高めるのは簡単ではありません。また、学ぶことに自ら投資したくとも経済的にそれが難しいような若手社員も多いと思います。副業は、社員が自らの意思で実際に取り組み収入という形で結果もでるものなので、観光ガイドの副業を通じて顧客対応力を高めたり、アプリ開発の副業を通じて新しいシステム開発言語を習得したり、と非常に具体的な能力開発につながります。
活躍する副業社員がでてきたら、どんどん社内外にその活躍度合いを発信することで、他の社員の「自分もやってみよう」という前向きなチャレンジや「あの人のように自分を高めながら働きたい」と考える優秀な社員の採用にもつながっていくことでしょう。ここまできたら、副業を解禁したかいがありますね。
ぜひ、最初の一歩を踏み出してみてください。

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副業マニュアルと就業規則規程例
WRITER
社会保険労務士
星野千枝
多様な働き方の推進と聞くと、多様な人材を受け入れることに意識が向きがちですが、社内の人材自体も多様な働き方をする人材になり得るのです。会社全体で前向きに副業を支援すると、社員の成長にも会社の成長にも効果が期待できるので、いいことだらけの“福業”になりますよ!<プロフィール> 星野SR事務所代表(平成21年1月に社会保険労務士登録)高校生の娘を持つシングルマザー。<略歴>マザーズ上場のIT広告業でマネジメントを含み6年半の人事に従事。社会保険労務士の知識と人事の経験を活かし、人事支援をメインに活動中。