1万kmリモートの記事2017.05.15
辞令のない海外滞在どう捉えるか
駐在・出張・派遣はどう違う?社員を海外に行かせるときのオキテ
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2017.05.15 文章 / 味志佳那子
社員の海外渡航を表す言葉の違いとは?
色々調べていく中で感じたのは、海外で働くと一口に言ってもかな〜りややこしい!ということ。労務管理をはじめ、税金やビザ申請に至るまでの判断基準となるのは、海外滞在をどんな言葉で表すかです。しかし、出向、赴任、駐在、出張、転籍等……、海外で働くことを意味するいくつかの単語の中から、自社のケースに当てはまるものを見つけていきましょう。
実は2つのポイントさえ押さえれば、海外滞在の定義づけは意外とカンタンです。
①[所属]現地滞在中、従業員の雇用元は日本国内企業か渡航先企業か?
②[指揮]現地滞在中、業務指示を出すのは日本国内企業か、渡航先企業か?
この質問に答えるかたちでそれぞれの言葉を分類してみると、次の3タイプに分けられます。
【赴任、駐在、出向】
① 日本国内企業
② 渡航先企業
【転籍】
① 渡航先企業
② 渡航先企業
【出張】
① 日本国内企業
② 日本国内企業
今回の1万kmリモート実験は、日本国内企業と雇用関係を結んだまま、海外滞在時の業務指示も同様に日本国内企業から受けるので【出張】であると言えそうです。
なお、同じ意味を持つ赴任、駐在と出向ですが、それぞれが法的にハッキリと区別されているわけではなく、会社ごとに社員に伝わりやすい名称を使うのが良いとのこと。一つ付け加えるとすればこの3つには“ある一定期間”という意味が含まれているので、長期滞在を意味する場合に使用すると良さそうです。
出張だけど辞令なし? 注意すべきは「労災」
そもそも、労災は業務災害と通勤災害に分けられています。
▽ 業務災害:労働者が業務を原因として被った負傷、疾病または死亡
▽ 通勤災害:通勤によって労働者が被った傷病等
また、業務災害が給付される条件には労働者が労災保険の適用される事業場に雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因と成って発生した災害と定められています。
つまり、今回のような辞令のない海外出張&在宅勤務の場合、
▼ 社命がない=業務だと断言しづらい
▼ 在宅勤務=業務以外(家事や育児等)が交じりやすい環境にあるため、万一負傷しても業務によるものだと断定しづらい
ということでした。
労災であるかどうかはケースごとの状況に応じて判断されるため、事前に労災を受けられるかどうか見極めることは難しいそうですが、労災がおりないことも考慮し、民間の海外旅行保険に加入しておくことを薦められました。
在宅勤務に関しては、海外生活に限らず日本国内でも判断が難しいようで、労基署相談員の方は「働き方の緩和が進むにつれ制度が整っていくかもしれませんね」と話してくれました。
最後に余談になりますが、海外生活における不安といえば中東やヨーロッパで頻発しているテロがありますね。これについては、もともと労災対象外。しかし実際に社命を受けた海外出張中にテロに遭い亡くなった方がいるそうで、その場合は特例的に労災対象になったとのことでした。加えて天災(地震等)も労災対象外のため、業務が関係する出張なら民間の海外旅行保険に加入しておき、万一に備えるほうが良いでしょう。
自己申告制で海外勤務する方法があってもいいんじゃない?
最近ではWebコミュニケーションツールが充実していることもあり、海外在住のまま日本企業と業務委託契約を結ぶケースもかなり増えてきていますが、そもそも海外で働くと言われイメージするのは大きく分けて2つ、現地採用か日本企業からの出向だと思います。
今では海外現地法人とのマッチングを行うエージェントも数多くあるので決して無理な話ではないものの、慣れない文化の中で働くとなれば、ためらってしまうのは当然。できることなら勝手知ったる日本企業で雇用され、出向など社内制度を利用しながら海外に行けたらと思いますよね。
だからこそ、今回のフランス滞在のポイントに据えたのは社員のまま海外でフルリモートすること。勤めている会社の業務に支障がないことはもちろん、個々人がパフォーマンスを上げられる状況を作れるのなら、自己申告制の海外勤務という方法があってもいいんじゃないかと思うのです。

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辞令のない海外滞在どう捉えるか
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辞令のない海外滞在どう捉えるか
WRITER
編集者・ライター
味志佳那子
今回模索しているのはあくまでも一つの方法ですが、少しずつでも実践できる人と企業が増えると良いなと思います。海外に足を運ぶことで受ける刺激や、「日本の常識は世界の常識じゃない」という気づきから、働くことをもっとポジティブに楽しめる風潮ができていきますように!
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