退職の記事2017.04.28
貯金なしで無職になる前に
無収入時の住民税・年金・健康保険と失業給付について
2017.04.28 文章 / 星野千枝
無職なのにかかる?住民税のしくみ
出典:Pixabay
住民税は後払い方式の税金なので、会社を辞めても納付する義務は追うことになるのです。退職後の住民税の払い方は3つ選択肢があります。以下の例に沿って説明します。
【住民税の納入方法】
例:住民税年額12万円の方が7月末で退職する場合
①特別徴収の継続
あらかじめ次の就職先が決まっている場合に選択できる方法で、これまでと同様に新しい会社を通じて納付する方法です。
7月末に会社を辞めて8月1日から新しい会社で働き始める場合、残っている10万円の住民税は8月から翌年5月までの給料からこれまでと同様に分割して給与天引きし、会社を通じて納付します。
②普通徴収
退職後に納付する予定だった住民税を、個人で支払っていく方法です。個人で納付する場合は、役所から郵送される納付書に基づいて納付することになります。特別徴収は1年分を12か月で分割して支払っていくのに対し、普通徴収は支払いのタイミングが年4回(6末・8末・10末・1末)と決められています。
7月末に会社を辞める場合、残っている10万円の住民税は8末・10末・1末の残り3回のタイミングで分割して支払っていきます。この場合、まずは8末までに3万4千円の納付が、その後10末と1末にそれぞれ3万3千円の納付が必要になります。
③一括徴収
退職する会社で最後に支給される給料から、翌年5月までの納付予定の残額をまとめて一括で支払ってしまう方法です。
7月末に会社を辞める場合、もともと7月に徴収予定だった1万円と残っている10万円の合計11万円の住民税を最後の給料からまとめて給与天引きし、会社を通じて納付する方法です。
①②③いずれの方法を選択しても、納付する総額に変わりはありませんが、納付するタイミングには大きな違いがあります。また新卒で入社して4月から働き始め12月に退職したような場合でも、翌年6月から住民税の納付が発生する可能性が十分にありますので、注意が必要です。
こんなにかかるものなの?社会保険のしくみ
出典:Pixabay
年金は、日本に居住する20歳以上60歳未満の方に加入義務があり、無職なら加入しなくてよいというものではなく、単身の方が会社を辞めた場合、国民年金の第一号被保険者になるのが一般的です。20歳を超えていたけれど学生時代は払った記憶がないという方は、親御さんが払っていたあるいは学生納付特例制度という制度を活用していたのかもしれませんね。
健康保険も、日本に居住するすべての方になんらかの公的健康保険に加入する義務があります。単身の方が会社を辞めた場合、市区町村が窓口の国民健康保険に加入するのが一般的です。あるいは継続して2ヶ月以上の被保険者期間があれば会社で加入していた健康保険に継続して加入(任意継続)することも選択できます。
どちらの健康保険を選択しても、病院で保険証を提示した場合にかかった「医療費の本人負担が3割」であることには変わりないのですが、国民健康保険と任意継続では保険料の決め方が大きく異なるので、実は人によりどちらが安いかは異なります。
私の携わった経験では、単身の方は国民健康保険、2人以上の扶養家族がいる方は任意継続の方が、保険料が安くなることがほとんどでした。ただ、任意継続は途中から個人の希望するタイミングで国民健康保険に切り替えることはできないこと、会社で加入していた健康保険の種類によっては付加給付と呼ばれる+αの給付が受けられることなど、金額以外の面でも比較検討すべきことはあります。社会保険料の金額例を挙げます。
【1か月あたりの社会保険料】
例:年間給与額が350万円の場合
国民年金保険料 16,490円(※平成29年度定額)
国民健康保険料 17,500円(※給与額、年齢、居住する市区町村により異なる)
あくまでも試算ですが、社会保険料におおよそ1か月あたり3万4千円かかる計算です。知らずにいてある日突然納付書が届いたら結構なインパクトではないでしょうか?
なお、国民年金は自己都合による退職の場合でも、収入が無く保険料を納付することが困難と認められる場合には、申請することで保険料の一定額免除が認められる可能性があります。困ったときの頼みの綱として、覚えておくとよいでしょう。
実は頼りになる雇用保険の失業等給付
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ですが、退職することで受給権利が発生するお金もあるのです。そう、雇用保険の失業等給付です。「よく知らない」「耳にしたことはあるけれど自分には関係なさそう」と思っている方が意外と多いことに驚きます。どうやら、「ハローワークを通じて仕事を探すときにもらえる給付」「就職活動をはじめて4か月目からしかもらえない」というような、断片的な知識から自分には関係なさそうだと判断してしまっているケースがあるようなのですが……。その知識、半分アタリで半分ハズレです。
失業等給付は仕事を探す方の生活を支える給付で、ハローワークに掲載されている求人でなくとも、例えばPARAFTで求人募集を見つけて就職活動をしている場合でも受給できる可能性があります。また、就職活動を始めて2か月で仕事が決まった場合、基本手当(失業手当)の給付は受けられなくとも再就職手当は受給できるという可能性があります。
ただこれらの受給権利は、自己都合で退職する場合であれば退職前の過去2年間に12か月以上の雇用保険被保険者要件を満たす期間がないと発生しません。つまり、新卒で入社した会社を2月に自己都合で退職するような場合には、対象にならないので注意しましょう。
なお、雇用保険の失業等給付は次の仕事が決まってから申請して受給できるものではなく、事前に申請をしておかなければ受給資格を得られないものなので、ハローワークのサイトなどを通じて制度をよく調べてみることをお勧めします。退職する前にこれらの情報を集めておけば、次のお仕事が決まっていない場合でも安心して転職活動に専念できるのではないでしょうか。

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貯金なしで無職になる前に
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貯金なしで無職になる前に
WRITER
社会保険労務士
星野千枝
まずは、一番身近な自分の給料明細を見るところからはじめてみましょう。普段、振込される手取り金額しか見ていないような方は、給料明細をみると実際の給料額から退職しても自分で負担しなくてはいけない住民税や社会保険料がひかれたあとの金額が手取り金額であることが実感できると思います。その上で、辞めるか?もう少し頑張るか?決めても遅くはありませんよ。<プロフィール> 星野SR事務所代表(平成21年1月に社会保険労務士登録)高校生の娘を持つシングルマザー。<略歴>マザーズ上場のIT広告業でマネジメントを含み6年半の人事に従事。社会保険労務士の知識と人事の経験を活かし、人事支援をメインに活動中。