東大生の記事2017.06.13
議論白熱のサロン
東大生を知的に揺さぶる一軒家サロン「KOMAD」誕生
keyword: 東大生 駒場 KOMAD リツアン サロン
2017.06.13 文章 / 平田浩司
19世紀末パリのサロンのように議論
出典:PARAFT
パーティーの力の入れ具合は半端でない!と思いきや、この一軒家そのものが、半端でない刺激で満ちていました。1階のリビングではVRのゲームを楽しめます。誰でも迫力ある3D空間に入り込めます。
そして一番の刺激はこの一軒家に流れる「知的な時間」にありました。例えば、毎週火曜日には東大教養学部の授業としてゼミも開かれています。通称「すずかんゼミ」(ゼミ生12人)。元文部科学副大臣で現在、東大教授・文部科学大臣補佐官などを務める鈴木寛さんが「学藝饗宴」と銘打ち、国内最高峰の哲学者、自然科学者、芸術家、古武術研究家らと対峙させ、白熱の議論を経験させます。
ゼミ運営をサポートしている指揮者で慶應義塾大学SFC研究所上席研究員の木許裕介さんは、「かつて19世紀末のパリでは毎週火曜日の夜に、詩人ステファノ・マラルメを中心にサロンを開き、モネやドガ、ヴァレリー、ドビュッシーらの文化人が集って、活発な議論を繰り広げていたんです」と話します。このKOMADは、同じような文化的サロンとして、東大生たちを知的に揺さぶることを狙いにしているようです。
今の東大駒場キャンパスでは、学生たちは教室には夜9時ごろまでしかいられません。それ以降はセキュリティーなどの関係で帰宅を余儀なくされます。すずかんゼミに参加している東大教養学部2年生の大谷慧(けい)さんは「夜まで議論する場所がないんです」と言います。こうしたことも背景にしてKOMADは生まれました。
すずかんゼミでは、この一軒家に拠点を移してからは、講師として招かれた専門家も遅くまで学生たちに付き合い、学生たちはその後、ときには泊まり込んで議論を続けるようにもなりました。「ここは本にも囲まれていますし、会う人会う人がみんな違っていて刺激的で、学びに対する出会いの場になっていますね」と大谷さんは満足そう。
見返りを求めない社会貢献活動で開設
出典:PARAFT
同社専務の平野世己さんは、「もともと東京オフィスは麹町のビルに入っていたんです。けれども弊社代表(野中久彰さん)が東大の方々から相談を受けて、それじゃ、東京オフィスを駒場キャンパスの近くに移しちゃおう!ということになったんです」と説明してくれました。2017年3月に一軒家へ賃貸で入居。冒頭のパーティーはプロ料理人集団プロデュースのバーベキューやプロマジシャンの手品など随所に趣向を凝らし、学生たちのために企画したものだったのです。
同社には利益を社会に還元するという考え方があり、東大と接点を持ちたいというような「下心」はまったくありません。採用などの狙いも皆無。「好きにやってくれたらいいんです。僕らは、彼らが何をやっているのか知りません」と平野さんは笑います。
もちろん、同社東京オフィスの社員にしてみれば、職場がビル内から一軒家に変わり、しかも東大生たちが四六時中、近くにいることから、「今までと雰囲気がガラッと変わった」(平野さん)。「一軒家にしたのは、たまたまという面もあるのですが、こういうところで働くのもいいですね。夜、学生が残っていたら、一緒にご飯を食べに行くこともあるんです」と言います。一風変わった仕事場は、そこに働く人たちの働き方にも刺激を与えているようです。
アイデア創造につながる知的空間
出典:PARAFT
「大学では、例えば人工皮膚の研究はしているけれども、美容などについては研究が追いついていません。料理の学科だってありません。そんなふうに教科書から抜け落ちているところもKOMADで学べるように、いろいろ機会をつくっていきたいですね。料理にがっつりはまった経験が、将来、哲学者になったときに生きてくるとか、教科書以外から学ぶことは多いですから」と田中さん。
田中さんは「今先進諸国にはお金はあるけど、技術やアイデアが足りていない。今重要なのはこのアイデアなのです。ひとつアイデアがあれば、お金はついてくる」と指摘します。KOMADが、新しいアイデア創造にもつながる知的空間として根づいていってほしいものです。

![東大生を知的に揺さぶる一軒家サロン「KOMAD」誕生:r000017002902 | PARAFT [パラフト]](/files/alias_m1/000017002902/j2sgf1zb0i7rac8f607mcpkc.jpg)
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WRITER
編集者・ライター
平田浩司
リツアンの平野さんは「うちの会社ではなく、学生たちを紹介してください」と強調していました。オフィスを移転までさせて、オフィスのなかに学生たちが自由に動ける環境を提供する。自分たちは黒子に徹する。同社のそんな心憎い社会貢献に感服です。