1万kmリモートの記事2017.06.07
フランス式雇用の基本もおさらい
期限異なる2タイプ・フランスの雇用形態[CDD・CDI]とは
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2017.06.07 文章 / 味志佳那子
フランスの雇用制度のキホン
【労働時間】
35時間/週、1,607時間/年
【有給休暇】
2.5日/月、30日/年
【残業時の割増】
残業時間が週に8時間以内なら25%割増、8時間を超えると50%割増
※ 上記規程を適用する以前に、企業や業種別の労働協約で10%以上の割増賃金率を自由に規定できる
【法定最低賃金(SMIC)】
時給9.76ユーロ(2017年1月〜)
【定年退職】
65歳ごろから(ただし従業員に老齢年金の満額受給資格があること、本人が退職を承諾することが条件)
※ 老齢年金の満額受給資格がない場合は、70歳まで定年退職させられない
目を引くのは、1週間の労働時間が35時間というところですが、これは労使間の合意をもって長くすることができます。パリの建築事務所で働く知人が1日8時間の計算で働いていると言っていたので、労働時間については企業によってまちまちといったところでしょう。なお、最長労働時間は1日10時間、週48時間とされています(※ 週の平均労働時間が連続12週間にわたり44時間を超えてはならない)。
フランス人が何より楽しみにしているバカンスは、年に5週間分与えられた有給休暇をもとに生まれます。年末年始・夏・復活祭(4月ごろ)のタイミングで1ヶ月前後のまとまった休暇を取る人が多く、夏のバカンスに至っては私が滞在している6月初めの時点からすでに取得している人がちらほら見られるほど。業種などによっても少し差があって、アルザス地方でよく見られるワイン農家の場合、仕事が一段落する2月頃にまとまって休みを取り他の国へ旅行するケースもありました。
期限で分類するフランスの雇用形態
▼ 無期限雇用契約(通称:CDI)
雇用期間に定めがない形態
▼ 期限付雇用契約(通称:CDD)
雇用期間が決められている形態で、日本でいう契約社員と同様
※ CDDで働けるのは最長18ヶ月で期間中の更新は1回まで。それ以上雇いたい場合にはCDIに転換しなければならない。
CDIとCDDはあくまでも雇用期間に定めがあるかどうかを表すものなので、フルタイムで働くかどうかは個々人で異なります。CDIでもパートタイムで働くことがありますし、逆にCDDでもフルタイム働くケースも。また、日本と同じく派遣会社に登録して指定の企業で勤務する派遣社員(interim)の形もあります。
社会保障(失業保険や年金制度)が充実するフランスは、労働者の権利が守られている一方で企業側の負担も大きいため、CDIの雇用には慎重です。CDIとして雇用されたとしても初めの数ヶ月は試用期間が設けられていて、その期間中に契約解除になる可能性も。「何ができるか」をはっきりアピールできないと、安定した職を見つけるのは難しいのです。日本のようにキャリアのない新卒を初めから正社員&終身雇用することが、いかに珍しいかが分かります。
さて、実際にパリで働く友人に話を聞くと、彼女の事務所ではプロジェクトごとにCDDで雇用されるケースが多く[プロジェクトの期間=雇用期間]なのだそう。アサインされたプロジェクトが終わり、同事務所の他プロジェクトへの打診がないかぎり続けて雇用されることはなく、これはフランス国籍を持っているからと優遇されるものでもないそうです(フランスの労働法で国籍や人種による差別は禁じられている)。続けて雇ってもらえるのかどうかは、どの国の人でもCDDである以上ついて回る悩みだということでした。CDDの場合は今ある仕事以外に、別会社など横のつながりを持っておくと良いよ〜とアドバイスをもらうこともあるのだとか。
日本でも知られているように、フランスは近年高い失業率に悩まされています。2016年第1四半期の失業率は10.2%と、なんと日本の3倍以上。特に若年層の失業率が高く、同時に期限付きのCDDで働く若者が多くいます。安定的雇用を求める労働者と、安定的雇用に慎重な企業側。日本とはまた違う“働く”問題が見えてきました。

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フランス式雇用の基本もおさらい
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フランス式雇用の基本もおさらい
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編集者・ライター
味志佳那子
労働者と企業、双方の歩み寄りを目指し昨年初めに通称・エルコムリ法案が提出されましたが、企業側の権利を強めるとして大きな反対を呼んでいるそう。日本人からすれば恵まれているように見えたフランスでも、“働く”にまつわる問題は絶えないのですね。
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