テレワーク・デイの記事2018.03.23
五輪に備えテレワーク・デイ
テレワーク・デイとは?東京五輪で変わる働き方
keyword: テレワーク・デイ 参加 東京オリンピック 7月24日 テレワーク
【目次】
1、テレワークとは?
2、「テレワーク・デイ」とは?
3、テレワーク・デイ、どんな企業が参加したの? みんなの反応は?
4、テレワーク・デイ、これからどうなる?
5、テレワーク導入する?しない?
6、まとめ
2018.03.23 文章 / 岡野 美紀子
「テレワーク・デイ」とは? 初実施の2017年、参加企業は?
▼ テレワークの定義と3つのタイプ
日本テレワーク協会の定義によると、テレワークとは「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」のこと。「tele=離れたところ」と「work=働く」を組み合わせた和製英語です。
テレワークは働く場所によって、次の3つのタイプに分けられます。
・在宅勤務(自宅にいてインターネット、電話、ファクスなどで連絡を取る)
・モバイルワーク(移動中や顧客先などでパソコンや携帯電話を使う)
・サテライトオフィス勤務(勤務先以外のオフィススペースでパソコンなどを利用する
2、「テレワーク・デイ」とは?
▼ テレワーク・デイの概要
2017年から2020年までの毎年7月24日を「テレワーク・デイ」と位置付け、交通機関や道路が混雑する始業から午前10時半までの間、一斉にテレワークを試みようという国民運動です。2020年の7月24日は、東京オリンピックの開会式が行われる日。テレワークの実施で大会期間中の交通混雑を回避しようと国、東京都、経済界が連携して運動を展開しています。
▼ なぜテレワーク・デイ?
背景にあるのは、2012年に開催されたロンドンオリンピックでの成功事例です。この大会期間中、ロンドン市内は大変な交通混雑が予想されました。そこで、市交通局がテレワークの活用を呼びかけ。多くの企業と市民がこれに応え、混雑回避に成功したという経緯がありました。
東京オリンピックでもロンドンの成功にならうべく、「テレワーク一斉実施の"予行演習"をする日=テレワーク・デイ」が始まったというわけです。
▼ 「導入企業3倍」の政府目標、働き方改革のレガシーに
また、政府は「世界最先端IT国家創造宣言」(2015年6月)でテレワーク推進に向け、2020年までの数値目標として次の2つを掲げています。
(1)テレワーク導入企業を2012年度比の3倍にする
(2)週1日以上、終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカーを全労働者の10%以上にする
オリンピックを機に国内にテレワークを定着させ、働き方改革のオリンピック・レガシー(社会的遺産)としたいという国の狙いもテレワーク・デイの背景の一つです。
▼ テレワーク・デイ、企業の参加は3カテゴリ
企業の参加(事前登録)の仕方には3つのカテゴリがあります。
(1)テレワーク実施団体
:テレワークが可能な企業が参加。朝の通勤電車や自動車等を極力利用せず、少なくとも始業~10時半まで、テレワークの一斉実施またはトライアルに取り組む。
(2)テレワーク特別協力団体
:100人以上の大規模実施が可能な企業・団体。交通機関の利用状況、エネルギーの節減状況、テレワーク利用者アンケートなど、取り組みの効果測定にも協力する。
(3)テレワーク応援団体
:ノウハウの提供やソフトウェアの提供、コワーキングスペースなどテレワーク参加者が利用できる場所の提供など、各企業・団体によるテレワークの実践を支援する。
3、2017年のテレワーク・デイ、どんな企業が参加したの?
▼ 900企業・団体、6万人が参加
さて、初めての実施となった2017年、テレワーク・デイ当日はどんな様子だったのでしょうか。事務局発表によると、参加企業・団体は延べ927件、人数にして約6万人が参加しました。
▼ どんな企業が参加? 何をした?
これまでもテレワークに取り組んでいた企業が対象の社員や時間を拡大したり、1日だけトライしてみて本格導入に向けた課題を洗い出したりといった参加の仕方が目立ちました。実際の事例をいくつか見てみましょう。
① 【NTTコミュニケーションズ】取締役会もリモートで
NTTコミュニケーションズ(東京・千代田区)は、2007年から在宅勤務制度を取り入れているテレワークの先駆企業の一つです。テレワーク・デイ当日は約800人の社員が終日、在宅で勤務しました。
さらに、web会議や電話会議を活用し、打ち合わせのためのオフィス間の移動を抑制するなど、打ち合わせ・会議の持ち方も工夫。当日の取締役会もリモートで行ったそうです。
② 【Yahoo!】3000人が自宅でカフェで、どこでもオフィス
「どこでもオフィス」制度と銘打ち、2015年からテレワークに取り組むYahoo!(東京・千代田区)。コワーキングスペース開設や全館フリーアドレス制の社屋など、場所に縛られない働き方を普段から積極的に進めている同社らしく、当日は全従業員の半数に当たる3000人規模でテレワークを実施しました。
自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、参加者はそれぞれのワークスタイルに合う空間で作業をしたようです。
③ 【サニーサイドアップ】上りが混むなら下りに乗ればいいじゃない
「いつもの仕事を在宅で」というパターンが大半を占める中、ユニークな発想でテレワークに取り組んだのが、サニーサイドアップ(東京・渋谷区)の「下り電車に乗ろう」プランです。
平日の下り電車で都心の混雑を避け、海の家や高尾山でミーティングをしてしまおうという発想。遠方の顧客への挨拶回りや視察も兼ねているとか。実験的な試みながら、環境を変えた会議はいつもと違うアイデアを生んだそうです。
毎月1日を「Happy Sunny Day」としてテレワーク導入に取り組んできた同社。最寄り駅の一つが、東京オリンピック開会式が予定される「国立競技場」駅のため、「2020年までにテレワークの習慣化が必須」とのこと。今後も積極的に取り組んでいくそうです。
④ ワークスペース無料提供やアプリのお試し、特別サービスで応援
テレワーク・デイには「テレワークに必要な場所・ノウハウを提供する」という参加の仕方もあります。
積水ハウスグループの積和不動産が展開するレンタルオフィス「BIZ SMART」は7月24~28日、都内3カ所のコワーキングスペースで利用できる1日無料券を提供。働く女性支援で知られるキャリア・マム運営の「おしごとカフェ」(東京・多摩市)では当日、カフェでテレワークをする人にドリンクやフードが10%オフで提供されました。
ほかにも、テレワークで課題となるチーム内での情報共有に役立つアプリやクラウドサービスの無料お試しキャンペーンなど、多くの企業・店舗がテレワーク・デイに合わせたお得なサービスを展開。「うちの会社でもテレワークを試してみようかな」というトライアル的な参加を側面から支援しました。
テレワーク・デイ、みんなの反応は?
▼ 「会社より快適!」「駅に人が少ない」
はかどる、はかどる。会社よりも快適かも。#テレワーク・デイ
— オフィス夏 (@OfficeNatsu) 2017年7月24日
今日はテレワーク・デイ。電車内ではあまり感じなかったけど、東京駅は明らかに人が少ない?(?????)? ?#テレワークデイ #テレワーク・デイ https://t.co/4RRgfqzOeS https://t.co/bvt0EYTljs pic.twitter.com/bvXq98cMiJ
— ルッカ (@rukka_rukka) 2017年7月23日
7/24のテレワーク・デイ、当日テレワークをされた弊社社員の感想が上がってきました。『通勤にかかっている時間が自分や家族の用事に充てられる・有効活用できる』とのご意見が多かったです。時間ってどうしても限りがありますもんね。 #テレワーク・デイ
— CLINKS広報担当【公式】 (@clinks_pr) 2017年7月28日
▼ 「会社の方がはかどる…」「まずIT化が必要」
#テレワーク・デイ
— かべるね@リニアより自動運転車に財投を (@milonga789) 2017年7月24日
やはり在宅や出先ってのはベストなパフォーマンス出せねえな(・ω・)
下手すると相当な労働力の損失になるぞこれ
前の在宅勤務の時よりも今日はリラックスして仕事でしたけど、人の声がないと少し寂しい #テレワーク・デイ
— 葉月サメ子 (@haduki_7) 2017年7月24日
日本の職場は未だにIT化が進んでおらず、OECD最後尾なので #テレワーク・デイ の前にまずIT化することが必要なのであった… https://t.co/CEZfPAijX9
— tweet ?? meme (@_Eugene___) 2017年7月23日
▼ 「そんなのあったの?」
#テレワーク・デイ なんてあったんだ。
— しんのすけ?8/27 鈴鹿1000km (@yh2_element) 2017年7月27日
僕の周りじゃ話題にもなっていない。
テレワークできる職種なのにね。https://t.co/z7BOStBPFS
テレワーク導入する?しない? テレワーク・デイのこれから
▼ テレワーク・デイ「知らない」が6割
国が音頭を取って初めて行われた2017年のテレワーク・デイ。盛り上がりや実施効果はどうだったのでしょう。
転職サービスのエン・ジャパンがテレワーク・デイ実施前、企業の人事担当者を対象に行ったインターネットアンケート(※)によると、テレワーク・デイについて「内容も含めて知っている」と回答した人は12%にとどまりました。「名称だけ知っている」が28%、「知らない」との回答が60%を占め、事前の認知度はかなり低かったと言わざるを得ません。
(※調査期間は2017年5月31日~6月27日、同社サービスを利用する企業642社が回答)
▼ テレワーク・デイ効果検証は9月にも公表
100人以上の規模で参加した特別協力団体の企業を対象とした調査を基に、今後、テレワーク・デイの効果検証が行われます。
総務省によると、「交通機関(電車)の利用がどれくらい抑制されたか」「消費行動の変化による経済効果」「オフィスの節電効果」などを分析するほか、業務の生産性・効率性が向上したかなども各企業に任意で評価してもらう予定で、2017年9月下旬をめどに結果を公表したいとしています。
7月24日前後は報道などでも多く取り上げられ、「テレワーク・デイなんてあったの?」という層にも一定程度、認識は広がったのではないでしょうか。さらに、今回のテレワーク・デイの成果を「見える化」することで、国はテレワーク普及を後押ししたい考えです。
5、テレワーク導入する?しない?
▼ テレワーク、日本の現状は?
「平成27年通信利用動向調査報告書(企業編)」によると、テレワークを導入している企業は16.1%(2015年末現在)でした。前年比で4.8ポイント上昇しているものの、この10年、導入企業の推移に大きな変化はありません。「導入していないが、具体的な導入の予定がある」としたのは3.4%にとどまり、79.7%は「導入していないし、具体的な導入予定もなし」と答えています。
また、導入状況を従業員の規模別にみると、1000人以上の企業では3割を超えていますが、500人未満では1~2割ほど。中小企業にとって、テレワーク導入はハードルが高い現状がうかがえます。
テレワークを導入している企業の約8割は、一定の効果を感じているようです。生産性の向上や移動時間の短縮などに「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と回答しています。一方で、今後も導入の予定がないとした企業に導入しない理由を尋ねると、「テレワークに適した仕事がないから」が75.3%と最も多くなっています。
▼ 「テレワークに適した仕事」とは
日本テレワーク協会によると、テレワークに適しているのは
・妊娠・育児・介護、けがや身体障害などで通勤が困難な人
・企画・総務・人事・経理などの管理部門や、研究・開発部門の人
・営業やSE、サポートサービスなどの顧客対応業務の人
ーとされています。
ただ、「働き方改革」で柔軟なワークスタイルに関心が高まっている中、テレワークの利用は「子どもがいる」「親の介護が必要」といった条件を超えて広がりつつあります。
また、ICT(情報通信技術)の進展によって日々、さまざまなサービスや情報端末・ツールがリリースされている現代において、「テレワークが絶対不可能な業種」はどんどん減少していくと考えておくべきでしょう。
▼ テレワーク導入のハードルは?
企業がテレワークを取り入れた働き方改革を進めるうえでネックになっているのは、およそ次のような点です。
・通信環境やシステム、モバイル端末など、テレワークをするのに必要な設備がない
・情報漏えい、セキュリティーが心配
・働いている姿が見えないので、時間管理や人事評価をどうすればいいか悩む
・会議や打ち合わせなど、職場のコミュニケーションが十分に取れるか不安
▼ 導入するなら今? 助成金や支援が充実
こうした課題を踏まえ、国などは中小企業でのテレワーク導入を支援しています。
① 職場意識改善助成金
在宅またはサテライトオフィスで就業するテレワークに取り組む中小企業事業主に対して、必要な費用の一部を助成。web会議用通信機器の導入や、保守サポートやクラウドサービスの導入、就業規則の変更、社会保険労務士によるコンサルティングなどにかかった費用が対象となります。実際にテレワークで働いた従業員がどのくらいいたかなど、目標達成度に応じて受けられる支給額が変わります。
② 無料コンサルティング
厚生労働省は、テレワークに取り組む企業に対し、労務管理コンサルタントを3回まで無料で全国各地に派遣しています。テレワーク導入にあたっての課題の把握や対応策、導入の具体案などについてアドバイスを受けられます。
③ 先行企業によるノウハウ公開
:「先進的に取り組んでいる企業が、どんなシステムを使っているか知りたい」「テレワーク導入のアドバイスが欲しい」など、導 入を考える企業が求める具体的なノウハウの公開も進んでいます。テレワーク活用実績のある企業・団体による情報交換の場「テレワーク推進企業ネットワーク」や「日本テレワーク協会」のほか、「テレワーク相談センター」では無料相談も利用できます。
6、まとめ
初めての実施となった2017年7月24日のテレワーク・デイ。みなさんは、どんな働き方をされましたか?
2020年の東京オリンピックまであと3年。ただでさえ通勤ラッシュが名物になっている東京で、交通機能をいかに担保するかは大会開催の至上命題です。さらに「働き方改革」で、自分のワークスタイルに合った柔軟な働き方を求める傾向も強まっています。人手不足が指摘されている中、大手に限らず、中小企業も働き方改革に取り組んで従業員満足度を高めなければ、優秀な人材を確保したり、今いるスタッフの離職を食い止めたりといったことが難しくなってきています。
2020年に向けて、テレワーク普及の波は確実に勢いを増していくでしょう。「うちの会社では無理」とあきらめていた企業も、テレワーク・デイをきっかけに、まずは導入を検討してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

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五輪に備えテレワーク・デイ
WRITER
編集者・ライター
岡野 美紀子
「どこでもドア」があったら、好きな地方で暮らしながら東京で働くこともできるのに、このつらい通勤時間だって要らなくなるのに…。そんなふうに考えたことはないでしょうか? テレワークはある意味、「どこでもドア」なのかもしれません。実際の導入にはハードルもありますが、未来の働き方を模索してみたいですね。