育休後の記事2018.02.01
さあ育休後も前を向いて
働くママへ 育休後コンサル山口理栄さんからの応援メッセージ
2018.02.01 文章 / PARAFT編集部
プロローグ 元気をチャージできる「育休後カフェ」
▼ 働くママ同士でわかり合える貴重な時間
山口さんは2010年に当時働いていた会社を辞め、翌年から「育休後カフェ」を手がけてきました。「育休後カフェ」は、仕事をしながら子育てしている(したい)人たちに、自分とじっくり向き合ってもらうことをめざした懇談の場。週末などに2時間ほど、自己紹介の後、グループで自由に語り合うスタイルで進めています。これまで横浜、川崎、さいたまなどを中心に、延べ140回以上開催してきました。集まるのはほとんどが女性ですが、ときどき育児中の男性も参加するそうです。
川崎市の「育休後カフェ」でも、最初に山口さんが10分ほど話してから、すぐに自己紹介と会話が始まりました。
「4月から復帰したんですけど、わたしの会社は、子どもが熱を出してもお休みをもらいづらいんです」
「私は自分の部下にいろいろ仕事を頼んでおいて、自分だけ定時に帰るのがちょっと申し訳なくて……」
参加者はみんな、同じような状況に置かれているので、すこし話せば、すぐに「うん、うん、わかる、わかる」と共鳴し始めます。職場では、働くママは少数派で、なかなか悩みや不安を話す相手がいません。保育園でもいつも慌ただしくて、ゆっくり話せません。けれども、育休後カフェには、「今日だけはゆっくり話したい」と集まってきた仲間がいます。自然とおだやかな気持ちになり、自分の毎日を見つめ直す機会になります。
▼ 背中を押してもらい、前へ踏みだす
「自分だけ定時に帰るときは、ほんとうにそんな気持ちになりますね。よくわかります」。山口さんも同じ立場だったので、「わかる、わかる」とうなずきます。同時に「でも、そこはある程度わりきらないとね」と、先輩女性としてしっかりアドバイスをつけ足します。
同じ経験をしてきた山口さんからアドバイスをもらうと、働くママたちも「それいいんだ」と気持ちの整理がつくようです。
働くママは日ごろ、たくさんの悩みと格闘しながら、自分なりに進むべき方向を見定めています。ただ、ある程度方向を見定めても、ロールモデル(参考になる先輩)もなかなかいないので、本当にこれでいいのかどうか躊躇(ちゅうちょ)することがしばしばです。山口さんのアドバイスは、そんなママたちの背中を押してくれるようです。
川崎の「育休後カフェ」に参加した4人の女性たちは、山口さんのほうを真剣にみつめ、ときおりメモもとっていました。貴重なひとときだったことでしょう。4人のなかには、「以前に参加したことがあるんですけど、またモヤモヤしてきたので来ちゃいました」という人もいました。「育休後カフェ」は、お茶菓子とドリンクを用意して、リピートするママたちのことも待っています。
自分の人生を切り開こう! 働くママへのメッセージ /目次
▼ 働くママは戦力外なの!?
山口さんは、男女雇用機会均等法施行前の1984年に総合電機メーカー入社。エンジニアとしてソフトウェア開発部署で働き始めました。そのころ仕事と育児を両立していた女性たちはどんな状況だったのでしょう。山口さんは育休ができたこともあり子どもを持つ人生を選択。その後、両立に従事してきました。そんな先輩ママの実体験から、きっと多くのヒントが得られることでしょう。
>> 能力ある女性たちが育休後、お荷物扱いされる理不尽
▼ 使う側と使われる側の間に大きな溝がある
山口さんは2010年から育休後コンサルタントとして活動を始めました。「育休後カフェ」などを通じてたくさんのママと接してきた山口さんは現状をどうとらえているのでしょうか。そのあたりも聞いてみました。山口さんは自ら、大企業の部長として、働くママたちを使う側にもいました。使う側と使われる側の両方を経験してきた山口さんは、「使う側と使われる側に深い溝がある」と指摘します。それはいったい、どういうことでしょうか。
>> 育休とったけど…悩める後輩たちと接し見えてきたこと
▼ 会社では活躍できないから
出産して職場復帰する女性は、多くの場合、パートナーと相談することもないまま自分で短時間勤務を選択し、家事・育児を多く負担する傾向があります。さらに復帰後、家事や子育てをパートナーにあまり任せず、抱えこんでいく傾向が強いようです。本人がそれを希望しているならいいのですが、不満が大きいから毎日が悶々とします。山口さんは、女性たちがそのような抱え込み症候群に陥りやすい背景には、会社で納得のいく働き方ができず、せめて家庭ではしっかりしている自分でいたいという思いがあると指摘します。
>> 両立に悩むママたちが陥りやすい抱え込み症候群
▼ 輝き始めた働くママ
山口さんは、育休後にだれもが仕事と子育てを両立して活躍していけるように、2011年から働くママ向けに「育休後カフェ」を開いてきました。さらに、山口さんといっしょに働くママを支えていける「育休後カフェ®・ファシリテーター」の育成に力を入れています。ファシリテーターの育成を通じて、全国各地の働くママを広く応援していきたいと言います。
>> 働くママ向けの「カフェ」を全国に広げていきたい
夫、そして上司、会社へのメッセージ / 目次
もしあなたのパートナーが出産し、育児休業も終えて職場復帰するステージに立ったら、あなたはどうしますか? 山口さんは、「パパたちもぜひこの機会に働き方を変えてほしい」と語ります。パートナーと幸せいっぱいの家庭を築いていくために、夫たちが知っておきたい大切なことを、山口さんに教えてもらいました。
>> 子育てを始めた夫が知っておきたい大切なこと
▼ 働くママを女の子扱いしないで
もし女性の部下が出産して職場復帰してきたら、あなたはどう接しますか? 日本の管理職にはセクハラやパワハラと言われるのを恐れることもあって、女性部下をうまく使えない傾向があるようです。まるで腫れ物にさわるように扱われたら、働くママは悶々としてしまうことでしょう。山口さんに、イクボス(両立支援のできる管理職)になるための心得を聞いてみました。
>> 育休明け女性をやる気にさせるボス・泣かせるボス
▼ 働くママに声かけてますか
日本の管理職のなかには、子育て中の女性部下と仕事上のコミュニケーションがあまりうまく取れていない人が目立つようです。働くママが短時間勤務なりにがんばって働いていても、「それでいい」くらいの声がけもできていません。これは残念なことです。そのひと言をかけるだけでどれだけ女性部下は楽になれるかわかりません。
>> イクボスは働くママとコミュニケーション上手
▼ 本気で両立支援してますか
働き方改革は、残業を減らして早く家に帰るように号令をかけるだけのものではありません。山口理栄さんは、「仕事の成果をきちんと評価するしくみをつくるのが大事」「働くママたちに、会社が変わるという本気のメッセージを伝えてほしい」と話します。
>> 働くママをやる気にさせる根本からの働き方改革とは

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さあ育休後も前を向いて
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さあ育休後も前を向いて
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編集部チーム
PARAFT編集部
川崎市内で開かれた「育休後カフェ」にお邪魔して、しみじみ感じたのは「仲間同士なら、説明に多くの言葉はいらない」という、共感の深さでした。会社の同僚たち相手では、なかなかこうはいかないでしょうね。「育休後カフェ」の有り難みを痛感しました。
▼ やまぐち りえ 1984年4月総合電機メーカー入社。ソフトウェア開発部署にて大型コンピュータのソフトウェアプロダクトの開発、設計、製品企画などに従事。2度育休をとり、部長職まで務める。2006年から2年間社内の女性活躍推進プロジェクトのリーダーに就任(兼務)。2010年6月育休後コンサルタントとして独立。ダイバーシティ経営企業100選の企業を含む100以上の企業や官公庁、自治体に女性活躍推進コンサルティング、社員向けセミナーを提供。2016年度は法人向け研修を年間約200回実施した。個人向けには2011年から育休後カフェ、育休後面会相談などのサービスを提供している。育休後カフェはのべ140回以上実施した。著書に『さあ、育休後からはじめよう 働くママへの応援歌』(労働調査会)、『子育て社員を活かすコミュニケーション【イクボスへのヒント集】』(労働調査会)など。