リモートトラブルの記事2017.09.06
未払い時まずやるべきことは
「払ってもらえない!」リモートワークの未払いトラブル解決法
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2017.09.06 文章 / Ruaha 裕子
あなたは雇用型?それとも自営型?回収の第一歩は「契約書の確認」
ところが、
「夜中まで仕事したのに、時間外手当を払ってくれない!」
「間に合わないから残業したのに、残業代が入ってない!」
「連休を使って仕事をしたのに、休日出勤扱いにしてくれない!」
「立て替えた交通費や通信費、機材購入費を払わないと言われた!」
こうした「未払いトラブル」が発生して、しかも「問い合わせたけど、なんだか訳のわからない言い訳をされて取り合ってもらえない!」なんてことになってしまうと大変ですね。
もし未払いトラブルに巻き込まれてしまったら、確認すべき重要事項は、あなたは雇われているのか?それとも自営業なのか?です。
「はい?在宅ワーカーに決まってるでしょ?働いたんだから、払ってくれるのが当たり前!」と思っていませんか?
実は2017年時点では「在宅ワーカーだけ」を対象とした法律はありません。ですから、在宅ワーカーは現行法のどれか(または複数)に当てはめて働いていることになります。
一見すると同じ「在宅就労のリモートワーカー」でも、法律上の立場が違えば適用される法律も変わるのです。
現役リモートワーカーたちは、次のどちらかに大きく分けられます。
▼ 雇用型リモートワーカー
正社員、パート、アルバイト等、雇用契約(労働契約)によって「雇われて働くリモートワーカー」で、法律上は労働基準法に従って判断される
▼ 自営型リモートワーカー
自営業、フリーランスと呼ばれる「個人事業主」で、仕事の契約に関しては民法632条の「請負」、同じく643条の「委任」などを基礎に、契約ごとにクライアント・ワーカーで個別に取り決めをする
現在リモートワーカーとして働く人は、それぞれの法律に基づいて支払いを受けることになります。問題は、2017年時点ではこれらの法的枠組みの認知がまだ不十分だということ。そのため起こる誤解や行き違いによって、
・払わなければいけない報酬や賃金を払っていない
・根拠のないお金(賃金や立替)を請求している
といったトラブルに発展してしまうのです。
未払いが発生した時の対処法は、「払ってもらう側」の法律的な立場によって異なります。
まずはあなた自身が結んだ契約書を確認してみましょう。
▼ 雇用契約、労働契約
→ 雇用型リモートワーカーの対処法
▼ 業務委託契約、請負契約、委任契約、契約書がない
→ 自営型リモートワーカーの対処
自分がどちらに該当するかを確認して適切な相談先を当たるのが、解決を早めるコツです。
雇用型リモートワーカーは「就労形態」をチェックして労働相談を
前述のように、法律はまだリモートワーカーの実情に即していません。そのため会社とワーカーが、合法的で双方が納得できる状態に整えるためには、両者が自分の法的な立ち位置を正確に理解した上での信頼関係構築が必須です。
厚生労働省の『テレワークではじめる働き方改革』でも、リモートワークを始める時には契約内容を相互に確認する機会を作ることや、就業規則、労使協定でもルールを明確にしておくようにと勧めています。
しかし現状では、法的認識が浅いためにトラブルとなる例が見られます。最も多いのが残業代・休日出勤等の時間外勤務の未払いです。
これらは、
・労使どちらかの理解不足で不作為に法律違反をしているもの
・正しく運用されていれば払わなくても合法だが、誤った理解や運用で不法・違法になりやすいもの
の2種類があります。事例をみていきましょう。
① 会社側の理解不足で未払いが起こるもの
「自宅勤務であって残業ではない」「社屋外勤務だから時給引き下げor残業カット」「在宅ワークは最低賃金以下」など、会社側に法律知識がなく、都合よく解釈したルールを一方的に適用してしまうものです。リモートワーカーであっても社員には違いないので、法律に従って会社に未払い金の支払義務が生じます。
② ワーカーが必要な許可を怠って勝手に残業・休日出勤するもの
「残業・休日出勤の原則禁止、必要な場合は許可制」の就業規則・労使協定がある会社で、労働者の理解不足から無断でこれらを行うと、業務命令違反で処罰の対象になります。
一方で会社側は、労働の対価は全額現金で支払わなければならない(労働基準法24条)ので「支払義務」が生じ、応じなければ違法なサービス残業を黙認することになります。会社側にとっては、どちらにせよ迷惑な状況になってしまいます。
③ 正しく運用されれば合法だが誤解されやすいもの
裁量労働制、みなし労働時間制、フレックスタイム制や変形労働時間制など、勤務時間が流動的で固定されていなかったり、ワーカーの裁量で決められる雇用契約を結んでいる場合、会社とワーカーが契約内容を正しく理解できておらず、
ワーカー ⇒ 残業代、休日出勤手当が出ていないと思う
会社 ⇒ 支払っているのに、ワーカーが不当な未払いを請求していると思う
というすれ違いが生じる場合があります。
リモートワークに適した制度として利用者が増加しつつある、これらの特殊な就労形態は、他方で事前に法律上の手続きが義務付けられています。会社またはワーカーの一方的な都合で導入はできないのです。「便利だから」と手続きをせずに導入したつもりになっていると、気づかず違法労働をしている/させていることになる場合があります。
未払い金発生の疑いがあるとき、最初にすることは、
▼ 未払い金の有無を法律的に確認すること
まずは、証拠となる雇用(労働)契約書や、勤務時間の証明根拠になるものを持参し、社会保険労務士に相談してみましょう。理解不足が原因で生じた行き違いなら、会社側も「それは申し訳なかった」とすぐに対応を改めてくれる余地があるからです。
リモートワーカーといっても会社員やパート・アルバイトと同様に、未払い問題についてハローワークの労働相談や労働基準監督署等の公的窓口も利用できますし、違法性が明らかだった場合、公的窓口から会社へ勧告・指導という形で改善を促してもらえます。
しかし、会社側からみるとお役所からお叱りを受ける意味となり、例え会社側に過失があった場合でも、ワーカーに対する心象は悪化するでしょう。リモートワークではワーカーとクライアント・同僚・会社との信頼関係が非常に重要になってくるので、最初から喧嘩腰と取られるような交渉方法はおすすめできません。
会社側が説明を受けても、改善する態度が見られない時や、社会保険労務士から見ても悪質と思われる状況ならば、公的相談窓口への積極的相談で解決する方法もあります。
自営型リモートワーカーは「報酬に含まれるもの」を理解しておく
こういうケースは、そもそもワーカー自身が法律上の立場を誤解している場合があります。
業務委託契約、請負契約、委任契約、または“契約書を作成しないで働く”リモートワーカーは、個人事業主(自営型リモートワーカー)とみなされます。そのため仕事の対価として払われるのは「報酬」であり、雇用型が受け取る「賃金」とは違った性質を持っています。
・報酬を得るのに要した費用(経費)を含む
・報酬金額の計算方法は契約ごとでまちまち
・残業代や休日出勤等の手当ては原則ナシ
・業務完了後、請求してから払われるのが基本
・所得税の税率が高く源泉徴収されない場合もある
各案件の契約書を確認したところ雇用(労働)契約書“以外”なら、あなたが受け取っているのは「報酬であって賃金ではない」ということ。個人事業主ですから、労働基準法の規定は適用されず、交通費や物品購入・回線使用の費用、休日や残業等の手当は原則ありません。税金も高く、源泉徴収してくれないケースもあります。勘違いで不当な請求をしていないか? 確認してみましょう。
自営型リモートワークの報酬は納品完了後払われる「後払い」が基本とされ、入金される前の報酬を「売掛金」と呼びます。
自分がフリーランサーで自営業であることを認識しているリモートワーカーの中には、
・売掛金の回収ができない
といったケースも多く見られます。
この場合はクライアントへの再請求を行いますが、悪質な場合は内容証明郵便や少額訴訟といった法的アクションを利用して、とにかく「払ってください!」と請求する必要があります。詳細はいざ!売掛金回収作戦!にも具体的手法をまとめてありますので参考にしてください。
近年クラウドソーシングサービスが急速に増えたことで、リモートワーカーは一気に急増しています。クラウドソーシングでのリモートワークは、クライアント・ワーカー両方が初心者で、お互い業務の法律的な理解が浅いことがしばしば起こります。中には、
・自営型リモートワークのつもりが、実質的雇用になっている
・クライアントは雇用のつもり、ワーカーは自営のつもり
これらの「認識のズレ」が起こることも珍しくありません。この場合はやり取りを重ねて確認し合い、法律のルールから外れないように調整を図るのが望ましいでしょう。相互の希望と都合、利害だけを優先した取り決めは、気づかず違法になったり、どちらか一方(多くはワーカー)に不利な条件になったりする恐れがあります。

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WRITER
ライター
Ruaha 裕子
リモートワークは自由な働き方に注目が集まる一方で、働く人を守る法律の枠組みがまだまだ未熟。特に自営型リモートワークでは「相手が見えない」「連絡がつきにくい」等、リモート環境がワーカー側に不利になりやすい実情もあります。国もテレワーク推進のためにさまざまな注意喚起を行っていますから、ワーカーも自分の身を守るために自分の置かれている法律上の立場を学んで、「いざ」という時に備えることが求められます。
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