つくることばいきることばの記事2017.09.26
特別な言葉に出合える予感
単純な言葉に集約された創作への思い|つくることばいきることば
keyword: つくることばいきることば 永井一正 めくれバ いい書棚、いいオフィス 言葉
2017.09.26 文章 / 岡野 美紀子
画集のような、エッセイのような、詩集のような
こんな経験をされた方は少なくないと思います。仕事に悩んだとき、ライフステージの節目を迎えたとき、漠然としたモヤモヤが心を覆っているとき、不思議と人はそうした言葉に出合うもの。いえ、むしろそんなときだから、羅針盤の針となるような言葉や、なぐさめ励ましてくれる言葉を無意識に探しているのかもしれません。
それは身近な人が話してくれた体験談だったり、好きな歌の歌詞だったり、街中で偶然目に入った広告のコピーだったりします。そしてもちろん読書でも。ふと開いた本のページに答えを見つけた…なんて、読書好きならきっと誰しも経験があるのではないでしょうか。
もしかしたら、そんな言葉に出合えるかもしれない。そんな予感をくれるのが『つくることば いきることば』。画集のようなエッセイのような詩集のような、仕事の合間、「ふう、疲れたな」とちょっと伸びをした後なんかに、すいっと書棚から手に取ってみてもらいたい不思議な一冊です。
単純な言葉に集約された「そうありたい」という願い
本書は『LIFE』シリーズの不思議な動物たちと、短い言葉たちで構成されています。1ページには、たった一文か二文。例えば、こんな言葉です。
「つたなくてもいい。一生懸命は尊い。」
「本当にやりたいことは
熱があるから伝わりやすい。」
「できるだけ低い姿勢を保っているほうが
高く飛べるような気がする。」
「よくできたと思っても、
すぐ過去になる。
過去のものには頼りたくない。」
隣のページでは、神話の世界から出てきたような銅版画のサイやキリンや鳥や魚がこちらを見つめています。その魅力も相まって言葉はさらに輝きを増すかのようです。シンプルな言葉ゆえか、そのときどきで自分の心に届く一文が違うのもまたいい。教訓めいた言葉や格言を集めた本にありがちな分別くささはありません。「よし、この本を読んで解決策を探してやろう!」などと変に気負うことなく、日ごろから眺めたくなる素朴さが心地よいのです。
前書きの中で永井氏は、「描くのに手間のかかる銅版画だからこそ、わたしの思いがより強く出たのではないだろうか」と言い、「ここに発せられた言葉は、むしろそうありたいと願ってきた言葉」「自分を励まし、勇気づけてきたもの」と明かします。88歳となった今も新しい一歩を探し続ける永井氏の創作活動への思いが、ごくごく単純な言葉に集約されている本書は、クリエイティブ系の仕事をする方には特に響く何かがあるはずです。
「あっ…!」と声が漏れてしまうような発見をくれる一文や、まるで今の自分に向けて書かれたんじゃないかと思うような一節との出合いは、読書で得られるうれしい瞬間のひとつ。
みなさんにも本書でそんな出合いがありますように。
『つくることば いきることば』の書籍情報
著者: 永井一正
初版発行: 2012/3/3
出版社: 六耀社
価格: 1,620円(税込)
サイズ: 18.8cm x 14cm
頁数:200ページ
ジャンル: エッセイ
読了目安: 0.5時間
ISBN: 978-4897377018
WRITER

編集者・ライター
岡野 美紀子
「何かをつくる」という仕事には、いつも迷いや葛藤がつきものです。自分が何をよりどころにしているのかが見えなくなることもあります。そんなとき、原点に立ち戻るためのきっかけになってくれる『つくることば いきることば』。表紙のデザインも素敵なのでオフィスに飾っておくもよし。ふと手に取った誰かを励ます日があるはずです。
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