読書の技法の記事2017.11.14
本好きが読書術を読んでみた
読書の世界を広げよう|読書の技法
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2017.11.14 文章 / 和田由紀恵
30年かけて読める本は3,600冊
そんなわけで、暇さえあれば活字をパラパラ読んできた私ではありますが、例によって本書をパラパラしていると、著者が指摘する読書(というか人生)の有限性にハッとさせられました。
1ヶ月に10冊の本を読んだとして、年間120冊。30年で読めるのは3,600冊。3,600冊といえば、中学校の図書室の蔵書にも満たないとのこと。日常的に様々な書籍に親しむ読書のループは無限に続くような錯覚さえ覚えますが、実際にはこれほどまでに読める本は限られているのか……。
素晴らしい本、心を動かされる本との出会いは、人生の喜びの一つであると確信している私。貪欲にも、そうした出会いができる精度を高め、質の高い読書を目指していきたいと願ってみたり。よい本となかなか出会えない中で、月平均で300冊を読むという著者の「読まなくてもよい本のはじき出し方」は参考になりました。有為でない本を読んでしまって、何だか残念な気分になることがぐっと少なくなりそうです。
さて、著者のいう「はじき出し方」はどんなものなのでしょうか。特に参考になった箇所を、箇条書きで挙げてみます。
・初学者(初心者)は、書店員や専門家に知恵を借りて、読むべき本を選ぶ。
・知識の偏りを防ぐために、基本書は複数(3冊や5冊といった奇数)を読む。
・本の真ん中のページを読んでみて、文脈に乱れがないかなど本の作りが雑になっていないかを確認する。
「本の真ん中を読む」は書店の店頭でも簡単にできる、とても有効な方法です。早速取り入れていますが、本を買うべきか判断するのに役立ちます。真ん中でダレることなく細部まで気配りに満ちた本は、丁寧に作られた価値の高い本なのだと気づかされました。
読書環境を少し変えれば、新しい読書の世界が広がる
もうひとつ、読む本に合わせて大きく環境を変えてみることも勧めています。著者は奈良の吉野で行った『国体の本義』の輪読を例に挙げていますが、そこまで大層な内容でなくても、例えば、渋谷を舞台にした小説を渋谷のカフェでスクランブル交差点を眺めながら読む、といったことが新しい世界を広げると思います。
私が旅行に出かけるときにするのが、その土地に縁のある本を持っていくというもの。今年、雪の積もる湯沢町を訪ねる機会があったのですが、ここぞとばかりに『雪国』(川端康成・著、新潮文庫)を持参しました。慌ただしい旅行の隙間にパラパラとページをめくる程度でしたが、小説に描かれた清澄な空気を実際に体感することで、より作品への理解が深まったと感じました。
そして、最後に著者が提案するのが、週一回の書評の会合です。外務省時代には専門書をメンバー各々が分担して通読し、レビューを用意したそう。1時間で数十冊の知識が得られる書評の会合は、仕事の役に立ったとのこと。昨今では、この”めくれバ”も含めて書評サイトが花盛り。アマゾンのレビューも参考になります。他の人の言葉を通して知る書籍の内容は、自分で読むのとはまた違った理解が進みます。
本を読む目的は、人それぞれ。著者のように高度で多様な知識を得て、それを仕事に活かす読書をする人もいれば、娯楽として読書に親しむ人もいます。私にとっての読書は、人生を伴走してくれる友人のような本と出会い、知識や感動を得ることが目的です。いずれにしても、本書を通じて読書の大家の知恵を借りれば、さらに幸せな読書世界が広がるかもしれません。
『読書の技法』の書籍情報
著者: 佐藤 優
初版発行: 2012/7/27
出版社: 東洋経済新報社
価格: 1,620円(税込)
サイズ: 単行本
頁数: 279ページ
ジャンル: 自己啓発
読了目安: 2.5時間
ISBN: 978-4492044698
WRITER

編集者・ライター
和田由紀恵
知識を得るための徹底的な読書術は、まさに敬服するばかり。巻頭にあるカラーページで窺える著者の書庫の様子には、羨ましいことしきりです。そこまで到底及ばないながらも、これほどの知識を収集して咀嚼するノウハウの一端を、ほんのちょっとまねるのも、読書の幅を広げます。読書から学ぼう!という意欲を燃やしてくれる、激励のような一冊です。
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