リモートワークの記事2017.10.02
リモートワーク中の家事はNG?
リモートワークと家事の「良い関係」を築くコツ
keyword: リモートワーク 在宅 共働き 職務専念義務 ポモドーロ・テクニック
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2017.10.02 文章 / Ruaha 裕子
リモートワーク中の家事の可否を決める「拘束時間」と「職務専念義務」
そんな中、自宅を仕事場として、いわゆる“在宅勤務”をするリモートワーカーの場合、仕事の合間を縫って家事をこなすスタイルがしばしば紹介されます。意外にも、家事をしたいから自宅を仕事場にしているという人は昔から多かったようで、「煮物の音を聞きながら台所で執筆する」なんてエッセイストもいたようです。
実は筆者もその一人。書籍等で一日のタイムテーブルを紹介された経験があります。スキマ時間を活用して「家事⇒仕事⇒家事⇒仕事」と動く状況を、「ホントにかわるがわる働いているんですね~」と評されたこともあります。
ところが、ICT企業でリモートワークをする知人や、在宅勤務社員としてコールセンター業務に就く友人たちに聞いてみると、
「勤務時間中は家事禁止。会社や夫の勤務先、保育園、小学校の緊急呼び出しの可能性があるから“自宅の電話”に出るのはOK。」
「家事は会社と相談して、休憩と勤務時間外にやるようにしている。」
なんて答えが返ってきます。
つまり、同じリモートワークでも、
・仕事の合間に家事をこなしても問題ない人
・仕事時間は家事を禁止される人
の2種類に分けられるのです。この差を生むのが「拘束時間」と「職務専念義務の有無」です。
これまではリモートワーカーを【雇用型リモートワーカー】と【自営型リモートワーカー】の2つに分け、法律上“雇用されているかいないか”の違いによって生まれる、業務内容や給与・報酬の差異について多数ご紹介してきました。
しかし今回の「拘束時間」と「職業専念義務の有無」は、雇用型と自営型、双方に関係する重要なポイントです。
まず「職務専念義務」とは、拘束時間が決められている働き方に発生するものです。拘束時間とは、出勤から退勤までの間の時間のことで、ここから休憩時間を除いたものが「労働時間」になります。拘束時間のあいだは雇主の管理下にあるとされ、休憩を除き自動的に職務専念義務が生じると理解されています。
次章で詳しく見ていきましょう。
雇用型リモートワークに多い「職務専念義務」とその範囲とは?
雇用型リモートワークの場合でもこの原則は同じ。契約で決められた勤務時間はオフィスで働くのと同じく職務専念義務があると判断されます。
しかし一方の自営型リモートワーカーであっても、勤務時間制の仕事であれば、決められた時間は仕事に専念することを義務付けられるケースもあります。データ入力などで時間給制を取っている仕事やコールセンター業務、秘書代行、リモート学習講師などは、自営型リモートワーカーであっても職務専念義務が課せられる可能性が高い業務と言えそうです。
つまり「職務専念義務」がある場合、原則的に仕事中に家事をすることは禁止されます。勤務時間中ですから、仕事に無関係なプライベートの家事はご法度!ということですね。
ただし、実際には“猫も杓子も一切禁止!”というほど厳しく罰する例は少なく、会社またはクライアントとの話し合いで、お目こぼし程度の融通を効かせてもらえる場合もあるようです。雇う側にしても「雨が降り始めてるのが見えるのに、庭の洗濯物を取り込むな」とまでは言いにくい人情があるのでしょう。「洗濯乾燥機を回しながら待機する」「ヘッドセット装着したまま5分休憩で食器を洗う」などの業務に支障のない範囲で家事をこなす程度であれば、了承してもらえるケースもあるようです。
これらは、あくまでも会社側がワーカーの状況に配慮して許容してくれていることですから、「やり過ぎ」は禁物です。あまりにも大っぴらに仕事そっちのけで家事優先となってしまうと「職務に専念していない」と見なされてしまいます。会社としては堂々と「やってもいいよ」とは言えませんから、あらかじめ、許される範囲を先輩にこっそり相談しておくのもオススメです。
あるいは、半休や時間休が使える会社なら、上手に休みを挟んで家事をこなすのも良い方法です。
・子どもの予防接種、健診、急な受診、懇談などでどうしても一定時間の外出が必要になる
・家族の急病で家にいても手が離せない状況
・来客対応等で一定時間業務に従事できないことが明らかな時
こうした状況の場合は、事前に事情を説明して、半休や時間給を取得しましょう。家を離れる場合でも、きっかり決まった時間内で収められて作業再開ができる条件であれば、時間休を利用して日常家事の用事を賢くこなすのも、リモートワークと家事両立のテクニックになります。
職務専念義務のないリモートワークは「切り替え」がポイント
また雇用型リモートワーカーの中でも、裁量労働制やフレックスタイム制で契約している人は、勤務時間を厳格に確定されないため、職務専念義務がないケースがあります。
このワークスタイルの場合は、拘束時間も職務専念義務もないため、雇用条件に適合する範囲なら仕事以外の家事・育児をこなしていても問題はありません。
しかし、よいことばかりとは限りません。こういう働き方で問題となるのが、気持ちの切り替えです。自宅が仕事場で、しかも時間制限もない状況で働くとなると、
・メリハリがなく作業がはかどらない
・優先順位の切り替えに失敗しがち。仕事がはかどる代わり家事が滞る
・思うようにはかどらないことでストレスがたまる
といった、仕事以外の悩みが生まれてしまうこともあります。
また家事は、洗濯のように天気や時間帯で左右されるものや、量や頻度が一定でないものなど“自分でコントロールできない要素”を含む場合もあります。もともと家事が苦手な人だと、それだけで仕事との両立が深刻な悩みになることも。
こうした状況はモチベーションの低下を生み、さらにはパフォーマンスの低下につながります。そもそもこれらのワークスタイルで働くということは、納期厳守はもちろん、成果物の品質も含め、つねに一定以上の成果を上げることが要求されるということ。達成度不足と判断されればワーカーとしての評価が下がりますし、フリーランサーなら失注につながる危険性も高まります。
仕事がはかどらない日が続くと、無意識的に労働時間が長くなったり、短期間に連続して徹夜で作業をしたりと、睡眠と休憩を極端に削った無理なスケジュールに陥りやすくなります。そうしてやっと高収入を維持するというワーカーも少なくありません。
しかし、本当に“質の高いパフォーマンスを維持する”ためには、自己の裁量で行う在宅ワークでは、仕事のオン/オフの切り替えが重要です。
こんな時に気持ちの切り替え効果が期待できるのが、タイマーを使ったオン/オフの切り替えテクニックです。
代表的なものには、ICT技術者の間で定期的に話題に上る「ポモドーロ・テクニック」があります。
ポモドーロ・テクニックは、1990年代初頭にイタリア人のフランチェスコ・シリロ氏が提唱した、短時間の集中と休憩を繰り返して仕事をする方法です。
開発者、起業家、作家の3つの顔を持つフランチェスコ・シリロ氏は、「25分仕事をして、5分休憩」というサイクルで高い集中力と生産性を生む方法を編み出しました。ポモドーロとはイタリア語で「トマト」のこと。時間を図るのに台所で使うトマト型のタイマーを使っていたことから名付けられました。
この手法を日々のリモートワークにも取り入れてみましょう。
1回25分の作業時間ごとに5分間の休憩をはさみ、その休憩時間に家事を優先的に組み込むのです。ポイントは「5分程度で行える家事」であること。そうすることで仕事との両立を確実に守れるようになりますし、家事が滞ることも防ぐ効果が得られます。「家事が貯まると思うだけでイライラする」なんて人にとっては、特に効果が高そうです。
ポモドーロ・テクニックを活用したリモートワークが軌道にのれば、仕事全体がはかどるうえ、5分程度の家事がリフレッシュ効果をもたらすことも指摘されています。
もし、1回5分の休憩ではとても家事が追いつかないという時には、ご家族との協力方法を検討するなどして、解決策を模索してみてくださいね。

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WRITER
ライター
Ruaha 裕子
暮らしにどうしても必要になるのが家事なのですが、地味なせいか忘れられやすいものでもあります。たかが家事、されど家事で、貯まるとかなり大変になり、時間も取られますから、こなせる範囲で少しずつ要領よく済ませると、仕事環境を整える意味でも良さそうですね。在宅で仕事をしている状況は一見いつでも家事ができそうだと誤解されやすく、これもリモートワークを「簡単な仕事」「気楽」と勘違いされる要因となっているようです。どの程度の家事が仕事をしながら「許される」「できる」のか?をはっきりさせておくことで、仕事にもメリハリがつくように思います。
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