副業の記事2017.10.18
知っておきたい副業のマメ知識
ちょっと待った、その副業はじめてしまって大丈夫?
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2017.10.18 文章 / 星野千枝
確認してみよう!本業として働く会社での決まり
副業OKの会社が増えているのは事実ですが、「うちの会社はOKらしいよ」という社内のうわさ話だけではじめてしまうのは危険です。少なくとも、次の3点は必ず確認しましょう。
① そもそも本当に「副業OK」?
従業員が副業を始めるにあたり守るべき条件や制限があるか確認しましょう。副業OKの会社であっても、あらかじめ対象者が限定されていたり、許可制になっていたりするケースは意外と多いのです。
ダメでも「こっそり副業すればいいや」と思っている人がいたら、会社の服務規定や懲戒規定を確認してみてください。規定にはっきり「NG」と書かれている場合は、会社に知れたら懲戒処分の対象になり得る行為です。副業のせいで本業を失う可能性も含め、自己責任だと思ってください。
②「どんな副業」もOK?
副業の種類に制限があるか確認しましょう。どんな会社でも、本業への影響が懸念される副業はNGと考えるのが無難です。具体例をみてみましょう。
◇業務上の影響が懸念される例
・本業と競業にあたる仕事
・本業の機密保持に違反する仕事
◇会社の評判や職場の風紀への影響が懸念される例
・同僚や取引先に対し、物品や情報を販売する仕事
・キャバクラなどの接客業や風俗業などのナイトワーク全般
◇本業の就業への影響が懸念される例
・平日の睡眠時間が削られる夜間や早朝のアルバイト
なかにはもっと厳密に「自己研鑽になるもの以外はNG」としている会社もあれば、もっと柔軟に会社で受けきれない小規模の案件を、社員の副業用に紹介しているデザインや開発系の会社も存在します。ひとくちに副業OKといっても“OKの範囲”は会社によって大きく異なります。
③副業のマナー
副業には基本的なマナーがあります。例えば、副業OKの会社であっても就業時間に副業に時間を割くのはNGですし、副業の影響で本業に身が入らなかったり、居眠りをしたりと、本業にマイナスの影響がでるようでは副業ワーカーとして失格です。
ここからは番外編! 副業を始める前の3点を無事クリアした方にも見てほしいマメ知識をご紹介します。
【副業を始める前に知っておくと良いマメ知識】
▼労働時間の算出方法が特殊?
夜間や休日のアルバイトなど“給料をもらう副業の場合(ダブルワーク)”に限った話ですが、2つの会社で勤務する場合、労働基準法における労働時間は2つの会社を通算して考える必要があり、社会保険では特殊な取り扱いが求められることがあります。
▼労災に遭ったらどうする?
通勤途中に事故にあった場合や健康被害が発生した場合は、どちらの会社の責任となるのかは非常に微妙なところです。もしものときのトラブルを避けるためにも、本業先と副業先のそれぞれの会社に働く時間や通勤手段など、自ら情報共有しておくことをおすすめします。
副業と税金【ダブルワーク編】
まず、副業での所得が年20万円を超える場合は所得税の申告が必要です。少額だし申告しなくてもわからないかな?と安易に思ってしまいがちですが、申告しないことでかえって損しているケースもあるのです。マイナンバー制度が導入されたことにより、以前に比べて申告漏れが特定されやすくなっていることも考えると、胸をはって副業できるよう、基本的な知識を持っておきたいですね。
今回は、副業に携わる方法を2種類に分けて説明していきます。
・2つの会社と雇用関係を結ぶ副業(ダブルワーク)の場合
・フリーランスとして行う副業の場合
まずはダブルワークの場合の税金についてみていきましょう。
給料から天引きされる所得税には、甲欄と乙欄の2つの徴収方法が存在します。
同じ10万円の給料でも、例えば、甲欄の税額は720円、乙欄の税額は3,600円というように徴収される税額に違いがあります。どちらの徴収方法が適用されるかは「扶養控除申告書」を提出しているかどうかで変わります。
扶養控除申告書は会社に入社するとき、そして毎年の年末調整のときに提出が求められる書類で、これを提出している場合は税額を少しおさえられる甲欄の徴収になります。
もともと扶養控除申告書は1社にしか提出できないので、本業先は甲欄徴収、副業先は乙欄徴収になると思ってください。ひとことで言うと、副業先で働いたぶんは、高い税率で所得税が徴収されるということです(副業先での収入額によっては非課税となることもあり)。
ただし、毎月の給料から徴収される税金は、あくまでも暫定で徴収されているものなので1年が経過するタイミングで適正な税額に再計算します。これがいわゆる「年末調整」です。
ダブルワーカーは本業先で年末調整を行い、入手した源泉徴収票をもとに確定申告を行ってください。この確定申告はあくまでも適正な税額を算出するために行うものなので一概には言えないのですが、確定申告の結果、払いすぎていた所得税が還付されるケースが多く見受けられます。
【マメ知識|住民税】
本業の所得にさほど変化がなくとも、副業により総所得額が増えると、翌年6月以降に徴収される住民税が高くなる可能性が高いです。せっかく副業で収入を得られるようになったのに、住民税がぐっと高くなってがっかりなんて声も聞きますが、そんな方はふるさと納税の活用なども検討してみてはいかがでしょうか。
副業と税金【フリーランス編】
まず、個人が副業を通して報酬を得る場合、フリーランスで雑所得として所得を申告するケースと、開業の届け出を行い個人事業主として事業所得としての所得を申告するケースがあります。
どちらにも、メリット・デメリットはあるのですが、一般的にはまずフリーランスではじめて、継続して報酬が得られるという段階になってきたら個人事業主として開業の届け出を出すことが多いため、今回は、フリーランスの所得税の申告について触れていきます。
フリーランサーが申告するのは「得た報酬から、かかった経費を控除した所得」です。この所得が年間20万円以下の場合は、所得税の課税対象になりません。
ここでいう「経費」とは、副業するために購入した機材やかかった交通費、また自宅を仕事場にしている場合は、光熱費や通信費のうち副業にかかった分も対象になります。経費として計上するために、副業で発生した費用の領収書はしっかり保管しておきましょう。
最終的に1月から12月までの1年間の所得が20万円を超える場合は、本業先で通常通り年末調整を行い、入手した源泉徴収票とフリーランサーとしての所得を合算するための確定申告を行ってください。また、年間の所得が20万円以下にも関わらず受け取った報酬から所得税が引かれている場合も、確定申告を行うことによりこの所得税が戻ってくる可能性があります。
フリーランサーの場合は、報酬と経費について日常的に記録をつけておくと確定申告時期にバタバタせずに済むと思います。
こうしていろいろ考えたらとたんに副業を始めるのが億劫になった……なんて声も聞こえそうですが、副業を通じて、スキルを増やしたり収入を増やしたりできることは非常に魅力的です。いきなり会社を辞めて、起業する、経験のない仕事に就くよりも、副業からはじめられると、働く上でのリスク分散になり、無理なく自律した職業生活を目指すことができます。
ただ、副業に割ける時間は限られますし、初期コストがかかる場合もあるので、中途半端ではなく、やりたいことあるいはできることに振りきって副業をはじめると、スキルの習得や収入アップなどの求める結果につながりやすいと思います。気軽にリセットできるのも副業の利点なので、スモールスタートでまずははじめてみてはいかがでしょうか。

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知っておきたい副業のマメ知識
WRITER
社会保険労務士
星野千枝
ためしに検索エンジンで“副業”と入力すると「簡単」「稼げる」というようなワードが目に飛び込んできます。書店にも、同様のワードがタイトルに入っている副業関連本が並んでいます。ただ、中にはシステムの利用やセミナー受講など初期コストがかかる副業のビジネスモデルも存在しますので、納得して始められる副業を見極めてスタートしてくださいね。
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