大人のための社会科の記事2017.11.14
これは反知性主義への挑戦状
「考えること」をあきらめない|大人のための社会科
keyword: 大人のための社会科 井手英策・宇野重規ほか めくれバ 知恵本キタコレ! 教科書
2017.11.14 文章 / 岡野 美紀子
「とかくこの世は住みにくい」のはどうしてか
あのころからおよそ20年--。いわゆる「社会科の勉強」からは遠ざかり、いち社会人として、実社会の中に身を置いて毎日を過ごしています。
…が、とかくこの世は住みにくい。
少子高齢化や格差の拡大、経済の行き詰まりなど、眼前に立ちはだかる社会問題に対して自己責任が叫ばれ、あちこちで誰かが叩かれる日々に、身を縮めるようにして生きていかなければならないわたしたち。この社会の息苦しさは、年を追うごとに強まっているように感じられます。実際、寛容さを失いつつある社会の生きにくさを指摘する声は少なくありません。
「どうしてこんなふうになっちゃったんだろ」
「なんだか今が大事な転換点のような気がするけど…」
そんなことをぼんやり思いながら、書店の新刊コーナーでふと目にした『大人のための社会科』。帯にはこうあります。
社会をよくしたい、すべての人のための「教科書」。
昔からの社会科好きも、学生時代は苦手だったという人も、そもそも勉強が嫌いだった人にも、今こそ開いてみてほしい「教科書」なのです。
早くも重版!みんなが待っていた知性の力
キャッチコピーは「ぐずぐず言わずに考えろ!」。
この力強さ。トランプ米大統領の当選やイギリスのEU脱退に象徴される「反知性主義」(知的権威に懐疑的な態度をとる立場)の台頭に真っ向、「知性」で立ち向かおうじゃないか。そんな挑戦状ともいえるでしょう。
印象的な序文を引用してみます。
「私たち四人は、こんな知的状況に後押しされるように、この本を執筆しました。反知性主義のご時世だからこそ、あえて大人のための『教科書』を書く、上から目線の『先生』になろうと決めました」
この一節に、知を代表するアカデミズムの強い責任感と覚悟、そして現状に対する危機意識を感じ取ったのはわたしだけではないはず。今の社会に言いようのない居心地の悪さを感じている人たちへの励ましのようでもあります。
2017年9月の発売後、早くも重版が相次いでいるのは、そうした人たちがいかに多いかを示していると言ってもいいのではないでしょうか。
下のような12の章で構成される本書。それぞれの章タイトルが、すなわち「今の日本社会をとらえ直すためのキーワード」になっています。
・GDP
・勤労
・時代
・多数決
・運動
・私
・公正
・信頼
・ニーズ
・歴史認識
・公
・希望
これらのキーワードを切り口に、ごくごく簡単な言葉であらためて今の社会を問い直し、これからを見つめる本書。考えることをあきらめずに、前向きに地道に未来を語ろうという「知性」を信じたいわたしたちを誠実に受け止めてくれます。
『大人のための社会科-未来を語るために』の書籍情報
著者: 井手英策、宇野重規、坂井豊貴、松沢裕作
初版発行: 2017/9/1
出版社: 有斐閣
価格: 1,620円(税込)
サイズ: 18.8 x 13 x 2 cm
頁数:250ページ
ジャンル: 社会学
読了目安: 4時間
ISBN: 978-4641149205
WRITER

編集者・ライター
岡野 美紀子
「なんかおかしいな」「このままじゃダメなんじゃないかな」。漠然とでも、こう感じている人にはぜひ読んでもらいたい『大人のための社会科』。わたしたちの社会はどんな積み重ねを経て「今」があるのか、何を考えていかなければいけないのかが、まさに教科書のように易しく説かれています。「働き方」に鋭い関心を持っている読者の皆さんなら、きっと響く何かが得られると思います。
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これは反知性主義への挑戦状
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