私とは何かの記事2018.01.30
転職で変える分人の構成比率
「分人主義」で変わる明日からのコミュニケーション|私とは何か
keyword: 私とは何か 平野啓一郎 めくれバ あの人を想って選ぶこの一冊 コミュニケーション
2018.01.30 文章 / 味志佳那子
「本当の自分はたったひとつ」なんてあり得ない
出典:Frame illust
最近では、普段見せているキャラクターと異なる姿を見せることは「キャラ変」と呼ばれ、そのコミュニティ内では異質な現象としてとらえられます。できることならキャラ変はしないほうがいいし、そのためにも“ブレない自分像”は欠かせない要素です。
特に、インターネットやSNSが浸透している若い世代を中心に、自分のキャラクターづけやブランディングは日常的な課題です。
環境によって自分のキャラクターが変化してしまうという経験は、きっと誰しもが持っているものだと思いますが、そのなかで“本当の自分”にいちばん近いキャラクターって、一体どれなんでしょう。そもそも本当の自分がいるのに、なぜ私たちはそれと少し違うキャラクターを演じてしまうのでしょう。
小説家である平野啓一郎さんが本書で提起するのは「対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて『本当の自分』(本文より引用)」だということ。ひとりの人を表す最小単位とされてきた「個人」から、複数に分割可能な「分人」という新しい単位をもって、自分自身を、コミュニケーションをもう一度見つめてみよう−。そんな斬新なアイディアからスタートする一冊です。
本書でくり返し述べられているポイントは次の3つ。
・相手次第で、自然と様々な自分になる
・個性とは、決して生まれつきの、生涯不変のものではない
・一人の人間の中には、複数の分人が存在している(中略)あなたと言う人間は、これらの分人の集合体である
(上記は全て本文より引用)
知らないあいだに私たちは“一本筋の通った自分”、“確固たる自分”みたいなものを思い浮かべしまいがちですが、実はそうではないんです。むしろ多様な相手や環境に応じて、多様な自分が現れて当たり前。“自分とは分人の集合体”という表現に初めは驚かされましたが、考えてみたら私も身に覚えがあったのでした。
転職は「分人の構成比率」を変えるタイミング
出典:Frame illust
人間の個性が“環境によって変わる分人”によってできているとしても、それらを総合した“その人らしさ”というのはたしかに存在する気がすること。やはり自分を辿った先の“個性の根源”みたいなものが、やっぱりあるのではないだろうか−。
この疑問を解くキーワードは、「分人の構成比率」にありました。
平野氏いわく個性とは「分人の構成比率のこと」で、学校や会社、趣味のつながりなど、日々触れるさまざまな環境のなかで最も大きな比率を占める分人がその都度“自分らしさ”をかたちづくっていくのだと言います。だから何かの拍子に環境が変わり、コミュニケーションする相手の構図が変われば、それにあわせて自分の個性も変化させられるのです。
「学校での分人がイヤになっても、放課後の自分はうまくいっている。それならば、その放課後の自分を足場にすべきだ。(中略)学校での自分と放課後の自分とは別の分人だと区別できるだけで、どれほど気が楽になるだろう?(本文より引用)」
ここでの「学校」や「放課後」を「会社」「趣味のつながり」などに置き換えてみたら、どうでしょう? あなたの生活で今「足場」となっているのは? でも、本当に「足場」にしたいのは?
もし今の自分を変えたいと思っている人がいれば、分人の構成比率を一度見直してみるとよいのかもしれません。
環境を変えたいという理由で転職を考える人に向かって「環境のせいにしないで努力しなさい」となだめる場面を見かけることがありますが、「分人」という考え方を取り入れたら、もうそんなアドバイスは通用しなくなりそうです。
一生のうち多くの時間を費やす“働くこと”を見つめ直すことは、どこで、どんな人たちと交わり、どんな自分でいたいかを考えること。これからの人生をまったく違った角度から捉えなおさせる「分人主義」を、年齢を問わずすべての人に知ってもらいたいと思います。『私とは何か――「個人」から「分人」へ』、まさに現代人必携の一冊です。
『私とは何か――「個人」から「分人」へ』の書籍情報
出典:Frame illust
著者: 平野 啓一郎
初版発行: 2012/9/14
出版社: 講談社
価格: 799円(税込)
サイズ: 新書
頁数:264ページ
ジャンル: 人文 哲学・思想
読了目安: 3時間
ISBN: 978-4062881722
WRITER

編集者・ライター
味志佳那子
『私とは何か――「個人」から「分人」へ』は、複雑な概念を伝える本でありながら、理解しやすいよう丁寧に説明されていて、非常に読みすすめやすいのが特徴です。哲学書なんて小難しいと感じた方にこそ手に取ってもらえたらいいなと思います。
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