誰がアパレルを殺すのかの記事2017.11.14
思考停止が招く悲劇
アパレル衰退から学ぶこと|誰がアパレルを殺すのか
keyword: 誰がアパレルを殺すのか 杉原淳一 染原睦美 めくれバ 知恵本キタコレ!
2017.11.14 文章 / 味志佳那子
業界低迷の真相から見えてきたもの
業界の現状をこんなショッキングなフレーズで紹介するところから、本書は始まります。
流行に左右される洋服を大量生産し消費者の手に届くまで、その流れを表すキーワード「サプライチェーン」には、糸・生地等を製造する原料メーカー、商社やアパレル企業、卸売業者、百貨店ほか、たくさんの役者が介在しています。そして出来あがったのは、川上・川中・川下がはっきり分かれた業界構造でした。
バブル崩壊を機に消費スピードが急落して以降、アパレル業界は巻き返すことができないほどの不況に陥ります。役者の多い産業構造ゆえに生産性を高めることができず、過去の栄光に縛られた企業のなかには“売り場面積を広げてとにかく売り続ける”、“海外のファストファッションの施策をただ真似る”などの誤った舵取りによって、取り返しのつかない結果を招いたところも。
「古い慣習や成功体験にとらわれた従来型の思考。売り上げの減少を恐れ、いつまでも現状維持に固執する経営層。消費者不在の商品企画や事業展開−。(本文より引用)」
“作れば作るほど売れた”1970年代から、みるみるうちに業界が傾いてきたその理由とは。業界を殺す犯人は誰なのか。
その真相に近づく中で見えてくるのは、日本企業で起こっている「思考停止」の怖さでした。
「思考停止」があなたと会社を滅ぼす
たびたび大きな話題になる大企業の不祥事も、特定の誰かが犯人として名指しされるわけではないことがほとんど。「ずいぶん前から上の指示でこのやり方でやってきた」「経営陣の意向に従っただけ」「取引先との関係上やむを得なかった」など、自分たちがやろうとしていることの意味や正しさを省みなかった事実が浮き彫りになるばかりです。
「痛みを伴う改革を避け、ひたすら現状維持に固執する思考停止の姿勢が、今、この瞬間もアパレル業界を窮地に追い詰めている。(本文より引用)」
会社組織にいる以上、周囲と違った意見を唱えることは簡単でありません。本書でも既存のアパレル業界から革新的な取り組みが生まれたことは、ほぼなかったと言及しています。
そんな暗雲立ちこめるアパレル業界に変化をもたらしているのが、業界の“ソト”からやってきた企業の数々です。
本書後半では既存の慣習にとらわれない存在として、IT技術をうまく取り入れた「ZOZOTOWN」、“持続可能”をもとに成長を遂げてきたオリジナル生地やレースが人気の「ミナペルホネン」や「パタゴニア」などが紹介されています。
彼らは何を考え、業界をどう変えようと動いていったのか。
本書を通じて知るアパレル業界の新しいうねりは、どの業界で働く人にも「思考停止しない勇気」を教えてくれるはずです。
『誰がアパレルを殺すのか』の書籍情報
著者: 杉原 淳一、染原 睦美
初版発行: 2017/5/25
出版社: 日経BP社
価格: 1,620円(税込)
サイズ: 18.8 x 13 x 1.6 cm
頁数:252ページ
ジャンル: ビジネス 流通
読了目安: 3時間
ISBN: 978-4822236915
WRITER

編集者・ライター
味志佳那子
アウトレットモールが普及してしばらく経った頃、“アウトレット用”に製造されたであろう低品質の洋服を見かけた時に「あぁ、消費者もナメられたもんだなあ」と感じたことがありました。ここ数年は決まったブランドの半額セールでだけ洋服を買う私ですが、『誰がアパレルを殺すのか』で知った新しいビジネスモデルの企業にも注目してみようかなと思います。
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