身体知性の記事2017.11.28
そろそろ、身体いたわりませんか
日々の充実度高めてくれる新しい「身体論」|身体知性
keyword: 身体知性 佐藤友亮 めくれバ 読む羅針盤 感情
2017.11.28 文章 / 味志佳那子
痛みは身体が発する重要なサイン
「残業規制のニュースやってるけど、余裕で60時間超えてまーす」
こんな“疲れ自慢”がなかなか無くならない、日本のビジネス社会。時間や体調を犠牲にすることが一定の評価につながる風潮はまだまだ根強く、「本当はもっと身体を労ってあげたいのに環境がそうさせてくれない」という方はかなり多いものと推察します。
そもそも“身体”というものは、その“唯一性”に大きな特徴があるのではないかと思います。すべての人が同じ部品と構造からなる身体を持ちながら、同じ動きをするものは一つもない。「痛い」という感覚を他の人と共有することができないように、身体の調子を客観的かつ具体的に伝えるのはかなり難しいことです。
そのうえ休むこと自体に“許可”が必要な会社員の場合、痛みの程度を見える化した診断書などが求められることもあり、なおさら億劫に感じてしまうもの。ちょっとくらいならそのままにしておいてもいいだろうと、体調不良を我慢してしまう人は多いのではないでしょうか。
しかし『身体知性』の著者は、「痛み」には重要な意味が込められていると言います。
「痛みとは、取り除かれるべき問題である前に、身体が発している重要なサインなのです。(中略)大切なことは、肩の痛みを全身のバランス異常の現れ、すなわち、身体のどこかに過度の負担がかかっていることの「しわ寄せ」、あるいは、「海面から露出した氷山の一角」として出現しているものだと、とらえることです。」(本文より引用)
自分以外の人に分かってもらえないとしても、身体が発するサインにしっかり気づいてあげることー。そうやって世界に一つしかない自分の身体を大切する意味を、著者は新しい切り口の身体論として紹介してくれています。
身体が感情を生み、感情が判断を大きく揺るがす
『身体知性』で述べられているのは、最も価値があるとされてきた精神を生むのが、他でもない身体だということ。身体が受けるたくさんの刺激が、心や感情といわれるものを作り出し、そうして作られた感情がさらに、私たちの判断力に大きすぎるほどの影響を与えるのだと言います。
「情報を適切に入力することができる身体を持ち、その結果として感情が適切に形成されれば、合理的判断を行うことができる可能性が高くなります。もし仮に判断を誤ったとしても、それは経験として蓄積され、その後の生活に生かされます。」(本文より引用)
特に感情の影響を受けやすいのが、結婚や仕事など“答えがない”問題を決断しなければならないとき。どうしたらいいかが見えにくい問題であるほど“気持ち”に左右されやすい。皆さんにも一度や二度、いやもっと身に覚えがあるかもしれません。
本書前半は医学的根拠にもとづいて「身体知性」を丁寧に説明しているのですが、難しいことはちょっと後回しにしたいという方は、まず本書後半の思想家・内田樹さんとの対談からどうぞ。武道を通じて身体知性をそなえた彼らによる新しい「身体論」。今日からすぐにでも、身体との向き合い方を変えてみたくなる一冊です。
『身体知性』の書籍情報
著者: 佐藤友亮
初版発行: 2017/10/10
出版社: 朝日新聞出版
価格: 1,620円(税込)
サイズ: 18.8 x 12.5 x 1.3 cm
頁数:264ページ
ジャンル: 医学 医学一般
読了目安: 2時間
ISBN: 978-4022630643
WRITER

編集者・ライター
味志佳那子
何かを判断する時に「感情」が大きく影響するー、これが科学的に証明されているなんて驚きでした。『身体知性 医師が見つけた身体と感情の深いつながり』を読んですっかり合気道に興味をもった私は、近所の道場検索にいそしんでいます。
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