休み方改革の記事2017.12.21
生産性を上げる休み方
自社の休み方改革を成功させる3ステップ
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2017.12.21 文章 / 星野千枝
ステップ1 自社の年間休日と有休消化状況に着目しよう!
▼ 政府が描く休み方改革のテーマ3つ
①個人の人生の最適化(ワークライフバランス)
休暇でリフレッシュすることで仕事の質を高める、仕事以外の生活を充実させるなど、働き手が自身の人生を最適化する狙いがあります。
②労働力人口の減少を踏まえた経済発展(長時間労働削減・ダイバーシティ)
短い時間で高い成果を上げ、多様な人材を活用することで、限られた人的資源を有効に活用しようというものです。
③みんなで休むことによる相乗効果
多くの人が休むことで、家庭や地域のふれあいを増やし、消費の誘発や地域社会の活性化を目的としています。
プレミアムフライデーやキッズウィークの導入など、メディアでは③を中心に取り上げられがちですが、①②も含めて考えると、「休み方改革」は企業にとっても大きな意義があるのがわかります。
▼ ステップ1 自社の年間休日と有給消化状況に着目しよう!
年間休日と有休消化状況に着目して、自社の現状を把握することからはじめましょう。
自社の休暇日数は多いのか、それとも少ないのか……。社員の声や自分の常識に固執せず、客観的な視点で判断しましょう。そのためにも、以下の調査が参考になります。
【年間休日の参考データ(平成27年就労条件総合調査・厚生労働省より)】
1企業あたりの平均年間休日総数:107.5日
会社の人数規模で比較すると、1000人以上と100名未満の会社では8日ほど差があります。人数規模以上に大きいのが業種別の差で、情報通信業は120.5日であるのに対し、宿泊業・飲食サービス業は95.3日と25日以上の差があります。
【有休消化状況の参考データ(平成27年就労条件総合調査・厚生労働省より)】
1年間に労働者が取得した有休消化日数: 8.8日
有休取得率:47.6%
企業規模別、業種別でみる取得日数や取得率は、年間休日同様の開きがあります。有休に関して、興味深いのは男女別の取得率です。男性の取得率は44.7%であるのに対し、女性は53.3%と10%近くの差があり、有休取得率を引き上げる鍵を握るのは、男性であると言えます。取得率の引き上げを意識する際には、男性社員に着目してみるとよいでしょう。
私が携わったケースで、「上司の取得率が低い部門は部門全体の取得率も低い」とわかったことが、改善の突破口になったことがありました。取得率に部門や職種の差があるのではないか、世代によって差があるのではないか、などの仮説をもとに調査指標を立てると、全体の有給取得率だけではわからないヒントが見えてくるかもしれません。
ステップ2 自社独自の休暇を見直そう!
▼ 休暇の定義や付与日数の再確認
慶弔休暇やアニバーサリー休暇、リフレッシュ休暇など、何らかの要件を満たすことで申請できる休暇があれば、休暇の定義や付与日数をあらためて確認してみましょう。
生理休暇や育児・介護休暇、子の看護休暇など法律で定められている休暇であっても、法律で求められている以上の取り扱いを定めている場合は同様に確認します。
会社の裁量で設けられる休暇は、その会社のスタンスが反映されやすく、時代の流れによっても変化するので、形骸化しやすいのです。
▼ 現状を知らないという落とし穴
休暇制度の見直しに携わったある会社では、父母が他界したときの忌引き休暇を3日と定めていました。慶弔休暇は会社の裁量で決められるものなので、それ自体は問題ないのです。でも気になったので、3日と定めた意図を経営者に聞いてみました。すると「3日では足らないですよね。社員のみんなはどうしているのでしょうか」と逆にこちらに聞かれたことがありました。
そこで、その会社の現状を調べてみると、故郷が遠方だったり、喪主を務めたりした社員は、3日の休暇では足りていませんでした。彼らは、短期間に故郷と自宅を往復したり、年次有給休暇をつなげて取得したりして、何とか工夫して対応していたのです。それを知った経営者は、「慶弔休暇をしっかり付与していきたい」と、最大で7日取得できる制度に変更しました。
経営者の多くは、休暇制度の細かな部分にまで注意を払うことはできません。でも、大事なときに必要な休暇を取得できなければ、「会社は休みを取ることに否定的だ」と社員は捉えかねません。
休暇制度を長年見直していない場合は、もう何年も誰も利用していなかったり、社員の家族形態や働き方にあっていなかったりする休暇がないか、確認してみましょう。
制度の見直しを随時行っている場合でも、限られた社員だけが活用できる休暇制度に偏っていないか、多様な社員が活用できるようバランスのとれた休暇制度になっているかを確認しておくとよいでしょう。その際は、子育て社員だけでなく、疾病を抱えていたり、介護に不安を持っていたりする社員まで、視野を広げることが大切です。
ステップ3 休み方自体を見直そう!
年次有給休暇など各種の休暇について、以下の2つを確認してみましょう。
①各休暇の取得要件はハードルが高すぎないか
②各休暇の申請方法に問題がないか
実際に、会社のルールと異なる休暇取得の運用をしていることがわかったケースもあります。有給休暇の取得率が極端に低い部門があったので要因を探ったところ、病欠での有給申請について、部門長が誤った認識を持っていたのです。
リフレッシュ休暇の取得率が本社だけ高いというケースでは、そもそも他の拠点に申請用紙の設置がない、代替要員確保の問題から連続した休暇の取得自体が困難、という要因が見つかったこともありました。
紹介したケースはどちらも、制度の再周知や運用方法の見直しといった具体的な対応をとれば改善できます。休みにくい雰囲気という言葉の裏にある「休めない理由」を、しっかりおさえましょう。
▼ 休み方改革との向き合い方
具体的な課題が見つからない、課題はあるけれど何から手をつけていいのかわからない、どこまで改善したらよいのかゴールがみえないなど、休み方改革にモヤモヤしている方も多いと思います。
冒頭の「休みを増やすことが目的ではない」という点に立ち返って考えてみましょう。
まずは、会社の抱える課題に休み方改革を活かす、という視点に立ってみてはいかがでしょうか。
例えば、多くの企業が抱える生産性向上の課題。社員の能力向上に課題感を持っているならば、資格取得のために勉強したり、試験を受けたりといったことに、休暇を活用するのも一案です。業務の効率化に課題感を持っているならば、社員に交代で連続休暇を取得してもらって、休暇中の業務を他の社員に引き継がせる取り組みが有効かもしれません。結果として個々が持つノウハウの共有や業務のマニュアル化につながり、非効率な業務を棚卸しすることもできます。
「能力や業務効率の向上を呼び掛けても、思うように社員が動いてくれない」というのは、多くの人事に共通する悩みでしょう。また、「有休を積極的にとるように声がけしても、思うように取得率を伸ばせなかった」という経験も多いのではないでしょうか。別々の課題ではなく、関係性のある課題として捉えれば、休み方改革は非常に有効な生産性向上策となります。
休み方改革を進めれば「休みを増やしたことで何が変わったのか」という声も聞かれるでしょう。最初から目的を明確にした、独自の休み方改革ならば、休みを増やしたことで得られる効果は目的と同じはず。会社全体の理解が得やすく、動き方も明確です。このピントをずらさないためにも、まず自社の休み方がどんな状況かおさえるところからはじめることが重要なのです。
ただでさえ、人事が抱える課題は多いもの。ぜひ、発想を変えて、休み方改革に挑んでみてください。

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生産性を上げる休み方
WRITER
社会保険労務士
星野千枝
仕事の効率や生産性を高めるには、仕事に対するモチベーションが必要です。 休みが少ないことは、社員にとって仕事に対するフラストレーションの素になります。ですが、休みを増やしたからと言ってそれはフラストレーションの解消にはなっても、仕事に対するモチベーションにはあまり効果がないのです。このことは、アメリカの臨床心理学者ハーズバーグが2要因論で取り上げています。休みを増やすのは、休み方を見直す際のひとつの手段であって、目的ではないことを肝に銘じておきましょう。