働き方改革の記事2018.12.18
育休復帰ママ社員とイクボス
育休復帰ママ社員の仕事のモチベーションを上げる、上司の対応
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2018.12.18 文章 / 星野千枝
育休復帰ママ社員のために、職場環境の整備を進めよう
復帰前の面談で大切なのは、復帰後の仕事内容を伝えることではありません。採用内定者の面談や顔合わせは入社意思を高めるためのものですが、育休復帰社員の場合、保育園が決定して面談にきている時点で復帰意思自体が揺らぐことはまずありません。それよりも必要なのが、育休復帰社員の状況をしっかりヒアリングすることです。
①保育園の状況
・保育時間は何時から何時までなのか?
・延長保育は可能なのか?
・延長保育の利用条件は?など
②子育てを取り巻く状況
・保育園の送り迎えは主に誰が担当するのか?
・急病の際に頼れるあてはあるか?
・日頃から家族は子育てに協力できる状況なのか?
そのほかお子さん自体の状況にかかわることで、会社に配慮してもらいたいこともないか確認してみましょう。(例:定期的な通院の必要性など)
状況がわからないままぼんやりした業務内容を伝えるくらいなら、まずは状況をしっかり聞くことに徹した方が、結果的に仕事の適切な割り振りに繋がり、育休復帰社員も安心して復帰することができるでしょう。
もう一点、環境の整備で重要なことがあります。
ワーキングマザーの多くは、周囲の社員に対してなにかしらの引け目を感じた経験を持っています。半分は育児と仕事の両立に対する周囲の理解不足、もう半分は育休復帰社員の孤独感からくる思い込みではないかと思います。
周囲の理解不足解消のために、上司から周囲の社員に対して適切な声がけを行うことはもちろん必要ですが、この両方を解消する秘策があります。それは「百聞は一見にしかず」。私は、できる限り復帰前の面談へお子さん連れで来てもらうことをお勧めしています。
育児と仕事の両立の大変さを同僚に感じてもらうには、まだ小さく頼りないお子さんの姿とママとしてお子さんに接する育休復帰社員の姿を目にしてもらうことが一番効果的です。また同僚が子どもに対して興味を持ってくれたり、笑顔を向けてくれたりするのを目にすることで、育休復帰社員も「自分には居場所がある」と実感できるのです。
「○○ちゃんが待ってますよ!早く帰ってあげてください!」
「ありがとう。あとはお願いします!」
両方が気持ちよく言える環境にできるかどうかは、上司の動き方次第であることを覚えておいてください。
育休復帰ママ社員の仕事の割り振りを見直そう
復帰前の面談を通じて育休復帰社員の状況が確認できたら、想定している復帰後の仕事内容と照らし合わせて内容が適切かどうか確認してみましょう。確認のポイントは3つです。
①納期に余裕がある仕事か?
保育園の集団生活に病気はつきもの。お子さんの急病により数日仕事が滞る可能性はあらかじめ想定し、納期がタイトな仕事や納期遅延の影響が大きい仕事は避けた方がよいでしょう。病児保育を利用したり、家族に看護を頼んだりして出社できる場合もありますが、そこは病状次第になるのであてにしすぎないことが重要です。
②仕事をカバーできる状態にあるか?
産休前と同じようには働けないということに周囲も戸惑いますが、実は育休復帰社員自身が一番戸惑います。不在時のオペレーションについて、上司が主導してルールを決めてしまいましょう。
具体的には、「仕事のスケジュールと進捗は可視化する」「進行中の仕事は共有フォルダにアップしておく」「取引先とのメールはCCで共有する」などのルールを定め、仕事ごとの代理対応者も決めます。仕事効率のアップや休暇取得の促進にもつながることなので、育休復帰者のみならずこの機会に全員を対象に進めるとよいでしょう。
③やりがいを持てる仕事か?
復帰後の仕事は、育休復帰社員がやりがいを持てる仕事でしょうか?
納期や不在時のカバーを考えると、当面は補助的な仕事についてもらわざるを得ないというケースは少なくないと思います。誰にでもできる作業やいずれIT化が進むであろう仕事にばかり偏らないよう、注意しましょう。
同じ補助的な仕事でも、産休前の知見を活かせる仕事や、経験として身に着けることに意義がある仕事はあるはずです。復帰がゴールではありませんので、子どもがいることを理由に補欠扱いしないようにしましょう。
育休復帰後のワーキングマザーの長期的な活躍のために
外部環境の変化として、フルタイムの固定時間勤務にこだわる企業が減り、勤務時間や在宅勤務に柔軟に対応できる企業が増えたことで、ワーキングマザーの転職はハードルが下がっていることは理由としてあるでしょう。
ただし、きっかけは前段の環境や仕事内容に対する不満と今後のキャリアに対する不安にあるのだろうと思います。この点をなおざりにして育休復帰社員のモチベーションを下げ、挙句の果てに「産休前と違って、仕事に対する意識が変わってしまった」と嘆くのはお門違いです。
お子さんが小さいうちは、ワークとライフのバランスは時間も意識もライフに偏ります。そのため男性社員や単身の社員と並列で比較すると、ワーキングマザーは仕事に対する意識が低いようにとらえられてしまうかもしれません。
でもそれは一時的なバランスの変化です。会社が長期的なキャリアを提示できれば、ワーキングマザー本人が工夫して時間をつくったり、仕事のやり方を変えたりすることはできるのです。
「私なんのために仕事してるんだろう・・」
仕事と育児の両立に身をすり減らし、周囲に神経をすり減らし、必死に頑張るワーキングマザーが一度は抱える自問自答です。自問自答の結果、仕事を生活のためと割り切ってしまった場合、再び仕事に対するモチベーションを高めることは容易ではありません。
上司がすべきことは、本質的には育児に配慮することよりも仕事に配慮することなのです。
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育休復帰ママ社員とイクボス
WRITER
社会保険労務士
星野千枝
住んでいる街、所得、子供の月齢、保育園の種別などいろいろな条件によって、保育料の負担は様々。1万円を切るケースもあれば、5万円を超える負担が発生するケースもあります。また、会社の給与形態や就業形態によって産休前と同額の給料で働けるケースもあれば、定額残業手当のカットや時短勤務により給料が10万円近く低下するケースもあります。育児と仕事の両立に伴う金銭的負担は、頭の片隅に置いておくとよいと思います。