日本ボロ宿紀行の記事2019.04.11
みっともなさを恐れない
信頼すれば突破口は見つかる/日本ボロ宿紀行|高橋和也さん後編
keyword: 日本ボロ宿紀行 高橋和也 平成世代 昭和世代 コミュニケーション
――前編のインタビューに引き続き、後編ではさらに高橋さんの仕事観に迫ります。時代の変化を積極的に吸収しようと努力を続ける仕事への姿勢や、平成世代が抱える悩みに向けた高橋さんからのアドバイスをお届けします。
【高橋和也さん プロフィール】
1969年東京生まれ。93年「男闘呼組」を解散後、アメリカ放浪の旅を経て、94年、舞台『NEVER SAY DREAM』、映画『KAMIKAZE TAXI』で俳優活動を本格的に開始。以後、その確かな演技力によって舞台、映画、TVにと幅広く活躍している。ミュージシャンとしては、カントリーミュージックを主体としてライブハウス中心に活動を展開中。
ドラマ『日曜劇場 集団左遷!!』(TBS・日曜夜9時、4月21日より放送)に出演。
ドラマ『日本ボロ宿紀行』(テレビ東京)のBlu-ray BOX&DVD BOXが6月26日に発売。
7月5日には、札幌でカントリーライブを予定。
ドラマ『日本ボロ宿紀行』(BSテレビ東京、毎週水曜、深夜0時~)再放送中です!見逃した方はぜひご覧ください。
2019.04.11 文章 / PARAFT編集部
若い世代と仕事をするなかで、時代の空気を吸う
高橋和也(以下、高橋):昔は、一つの作品に集中したくて、(同じタイミングにいただく)他の仕事のオファーは全部断っていました。でも最近では、あえて掛け持ちをするようにしています。その方が演技の力も抜けますし、何より若い世代と出会えるチャンスが広がりますから。
最近は、平成生まれの俳優や監督が、どんどん出てきています。一緒に仕事をする彼らを通して、今の時代の空気を吸う、つまり今の時代を理解することが、いい仕事をする上で大切だと思っています。
――時代を理解することが、いい仕事を生むということでしょうか。
高橋:そうです。だって“平成世代の考え方についていけないおじさん”を演じるのに、本当についていけなかったら、演技が成り立ちませんよ。彼らが何を考えているのかわかって初めて、“ついていけないおじさん”を演じられるんです。
わかっているためには、彼らのやり方や考え方を、一緒に仕事をする中で吸収しないといけない。そうやって初めて理解できるんです。まあ、大変なんですけどね。
自分もちゃんと変化して、時代の波に巻かれて生きていくことが大事
高橋:平成世代はお互いの距離をすごく気にしますよね。僕ら昭和世代とは、人との距離の取り方が全然違うんです。一番近い関係であるはずの恋人同士ですら、ものすごく淡々とした会話をすることもあるから、僕としては「えっ、何で?」って思う。
でも決して、彼らが冷たいわけじゃない。ちゃんと底には熱い想いが流れていて、それは僕らの世代にも共通するものなんです。世代によって表現の仕方が変わる、というだけ。表現の仕方、やり方が変わっていく中で、ついていけなくなったらまずいという危機感は強く持っています。
仕事を30年やってきて思うのは、そんな時代の空気を意識して吸い続けないと、昔のやり方にこだわって、今を否定してしまうかもしれないということ。今をちゃんと受け入れ、感じて、自分もその中にいる。自分もちゃんと変化して、時代の波に巻かれて生きていくことが大事だと思っています。
平成世代は勇気を振り絞り、みっともなく想いを訴えろ!
一方で、平成生まれのPARAFT編集部員は「どうやったら他人とうまくコミュニケーションがとれるんだろう」という悩みを抱えています。先輩として、アドバイスをいただけますか。
高橋:今の社会は人を信頼しきれず、人をこわがるようになってしまいました。平成生まれの人で、みっともないことや情けないことが死ぬほど嫌いな人って、多いですよね。でもその“みっともないこと”に、ブレイクスルーが隠れているはずなんです。みっともなくても、情けなくても、勇気を振り絞って自分の想いを訴えたらいい。
ドラマ『日本ボロ宿紀行』をやって改めて思ったのは、ストレートに自分の想いをぶつけられることの良さ。お客さんから「下手くそ」って言われた龍二が、「なにくそ」ってステージから降りて行っちゃうシーンが第1話にあるんです。
今の時代、実際にそんなことをしたら、二度と仕事ができなくなっちゃうけど(笑)。昔はそれが日常で、普通のことだったんです。面と向かってぶつかり合うのは大変だし、つらい。それでもぶつかり合えるのは、相手を信頼し、愛情や友情を感じているからなんですね。そんなリアルのぶつかり合いが失われつつあるのは、寂しいですね。
『日本ボロ宿紀行』というドラマに多くの視聴者が惹かれるのは、春子と龍二が徹底的に、ストレートにぶつかり合うからだと思うんです。20歳ほども年下で平成生まれの春子が「おっさんのポテンシャル、見せてくださいよ!」と龍二に喰ってかかる。あれは、いい意味で昭和なんです。
そんな風にぶつかり合えるほど、信頼できる相手を見つけられていないモヤモヤが、観ている人たちの中にある。それが春子と龍二のやり取りを観ることで、解消されているんだろうなと思うんです。
誰しも、ぶつかり合えるパートナーを探しています。だからこそ勇気をもって、みっともなくてもまずは相手を信頼してみるのが、何かの突破口になるかもしれません。

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みっともなさを恐れない
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編集部チーム
PARAFT編集部
平成世代をはじめとする若い世代と仕事を通して関わり合うことで、積極的に自分をアップデートさせている高橋和也さん。「表現の仕方が変わっただけで、根底にある熱い想いは同じ」と話されたのには、目からうろこが落ちたように思いました。
「日頃のコミュニケーションをとりあぐねているあの人だって、自分とは表現の仕方が違うだけ」。そう思えば、分かり合うことを諦めなくて済むかもしれません。ドラマ『日本ボロ宿紀行』の春子と龍二の間に、深川麻衣さんと高橋和也さんの間にあるような信頼を結ぶことができれば、もっと生きやすく、働きやすくなるかもしれません。
そのために、まずは自分が一歩を踏み出してみようと思うPARAFT編集部員でした。