TDMテレワークの記事2019.07.19
社会貢献でテレワーク推進
企業23社が結束して取り組むテレワーク【TDMテレワーク】
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国や都が主導するテレワーク・デイズ2019のスタートまで残すところ1週間となった、7月16日。都内にオフィスを構える23社の中小企業有志が一堂に会し、各社が結束して「TDMテレワーク」を実施すると発表しました。
普段からフルリモートで働く企業から、今回初めてテレワークを導入する企業までが連携して取り組む「TDMテレワーク」とは。PARAFT編集部が取材しました。
2019.07.19 文章 / PARAFT編集部
交通混雑の緩和=社会貢献を目的とするテレワーク
TDMテレワークの実施を呼びかけた、アステリア株式会社 代表取締役社長 CEO の平野洋一郎さんは、取り組みの背景をこう話しました。
ソフトウェアを開発・販売する同社。従業員の就業環境を整えて合理的に働けるようと、積極的にテレワークを取り入れてきました。最高気温・35度以上の予報が出た日は自宅でのテレワークを推奨する「猛暑テレワーク」の実践など、ユニークなテレワークに取り組んでいます。
テレワークが定着したアステリア社ですが、他の中小企業はと見渡せば、まだまだテレワークの導入が進んでいないのが現状です。平野さんはその理由に、企業がテレワークを取り入れる動機づけの弱さを挙げます。
「テレワーク導入というと、どうしても個人の事情に寄り添った、ワークライフバランスの文脈でとらえられることが多い。人事だけが考える課題となってしまいます。」
テレワークを取り入れるには、システムの導入や就業規則の改訂といった環境整備が欠かせません。こうした投資に、企業は二の足を踏みがちです。そこで個人のワークライフバランスを図るだけでなく、交通混雑を緩和させるという社会貢献を目的に掲げたのが、TDMテレワークの特徴なのです。
「TDM」とは、Transportation Demand Managementの略語。交通量を抑制したり交通需要の集中を平準化したりすることで「交通需要の調整」をすることを指します。
東京五輪などのイベント開催中だけでなく、普段から都心の通勤混雑が過酷なのはよく知られるところです。2020年の東京五輪開催中の大混雑はもちろん、日常的に都心の交通需要の調整に貢献できたら――。
「社会貢献のため、という文脈なら、テレワークを導入・推進しようという動きは人事だけの課題ではなくなります。広報部門も巻き込めて、経営課題としても取り上げやすくなる。社会貢献を目的としたテレワークなら、導入や定着はもっと加速するはずです。」
「TDMテレワーク」とはどんな取り組みなのか
2019年7月22日(月)から9月6日(金)までの期間中、23社の従業員総数およそ1300名が結束して、テレワークに取り組みます。
注目すべきは、中小企業ならではのフットワークの軽さです。TDMテレワークの実施を呼びかけたアステリア株式会社に応えて、首都圏にオフィスを構える23社の広報・人事担当者が業種を超えて参集。「TDMテレワーク実行委員会」を結成し、発足から半月ほどで共同記者会見を行うまでに至りました。
ところでTDMテレワークに参加する23社全てが、テレワーク導入済というわけではありません。
この取り組みに参加するのをきっかけにテレワークを初めて導入するという企業が4社ありました。一方で普段から社員全員がテレワークで働いている企業も。テレワークは導入しているけれど、利用しているのは限られた職種の社員のみという企業など、テレワークの浸透度合いは企業によってまちまちです。
テレワークの取り組み度合いが違うからこそ23社が協力する意味がある、と実行委員会は話します。
日常的にテレワークを行っている企業の知見を参加企業で共有できるうえ、他の企業と一斉にテレワークに取り組むことで、単独の実行では得られない知見を獲得する狙いがあるのです。
参加企業23社の業種もさまざま。人材系や旅行業、ネット宅配クリーニングなど幅広い業種が参加することで、新たな知見を期待できそうです。
TDMテレワークは独自に、4つの取り組みを行います。
▼ テレワーク一斉実施日を設け、効果を検証
7月23日には、23社が一斉にテレワークを実施。TDMテレワークの実効性を検証します。
▼ 子連れテレワークの実施・検証
一斉実施日の7月23日には、「子連れテレワーク」の実地検証も行います。
折しもTDMテレワークの実施期間は、首都圏の小学校の多くが夏休みに入る時期。子どもと一緒にテレワークをすることで、子育て中の従業員にとってどんなテレワーク環境が適切なのかを検証し、知見を広く共有することを目的としています。
▼ シェアオフィス紹介サービスと連携し、都内約100か所のオフィスで執務可能に
シェアオフィス紹介サービス「OFFICE PASS」と連携し、都内のワークスペースやカフェなどの都内約100か所を参加企業の従業員が利用できるようにします。働く場所として自宅が最適とは限りません。移動をできるだけ抑えながら、シェアオフィスを活用できるようにすることで、より最適な執務環境を模索します。
▼ 経路検索アプリ『駅すぱあと』が、シェアオフィス紹介機能を提供開始
TDMテレワーク実施期間中、『駅すぱあと』では目的地の駅近くのワークスペースを紹介する機能を提供します。商談目的などで移動するときも、近くのワークスペースを効率的に見つけてテレワークができ、不要な移動をしなくてすみます。
職種によってテレワークは無理、という壁
「エンジニアはテレワークをしているんですが、バックオフィスなどの管理部門はテレワークができていなくて……。」という声が参加企業からも聞かれました。
この職種はテレワークができるけれど、あの職種はできない。こうした違いが社内に生まれると、会社が一丸となってテレワークを推進しようという雰囲気は醸成しにくくなります。
職種による導入の壁は、どうクリアすればいいのでしょうか。
「この職種はできない、と諦めないことです。」と、アステリア社の平野さん。
書類を扱うからオフィスでしか執務できないのであれば、紙を電子データに変える。電話の応対のためにオフィスにいるのなら、オフィス外でも電話に出られるようなシステムを導入うする。商談をテレビ会議にする。社外からでも安全に社内データにアクセスできるよう、セキュリティ環境を整える――。
テレワークはできない、ではなく、テレワークをできるようにするにはどうすればいいのか。
考え抜いて環境を整備することがテレワークの導入につながり、ひいては災害発生時のビジネス継続にもつながります。
社会の公器として果たす、社会貢献のためのテレワーク。23社が結束して取り組むTDMテレワークがどんな知見をもたらすのか、取り組みが終わる9月まで目が離せません。

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編集部チーム
PARAFT編集部
TDMテレワークの記者会見には各社の広報担当だけでなく、人事担当や代表取締役社長などの経営層も出席。首都圏の交通混雑を大きな課題ととらえて、本気でテレワークに取り組もうとする23社の熱意を感じました。
テレワークを実践するだけでなく、そこから得た知見を共有し、広く社会に発信しようというのが、TDMテレワークの目指すところです。
実施期間中はFacebook特設ページ『TDMテレワーク実行委員会』で取り組みを発信していく予定だそう。ぜひウォッチしていきたいものです。