契約形態の記事2020.12.09
フリーランスの契約形態とは?
業務委託契約のSES(準委任)契約と請負契約の違いを確認
2020.12.09 文章 / PARAFT編集部
フリーランスの契約形態となる業務委託契約
業務委託契約は大きく2種類に分かれる
業務委託契約は、様々な業務に適用できますが、委託する業務内容や委託の方法によって契約が異なります。契約の種類は、大きく
「SES(準委任)契約」「請負契約」の2種類に分かれ、それぞれ法的な性質が異なる点に注意が必要です。
ここでは、SES(準委任)契約と請負契約の特徴と両者の違いについて解説します。
SES(準委任)契約の特徴
SES(準委任)契約とは、業務を行ったことに対する報酬を受け取る契約のことです。SES(準委任)契約の特徴をまとめると以下の通りとなります。
- 契約の目的:事務作業など業務処理
- 指揮命令権:発注者側にはない/strong>
- 受託者の責任:善管注意義務がある
- 成果:成果はあっても、完成に責任を負わない
基本的には、労働時間に対する報酬を受け取るという契約です。派遣契約のように指揮命令権は発注者側にはありません。受注者は、契約した時間に契約で指示された業務を遂行すれば、具体的な作業の進め方や服装などに関しては自由です。善管注意義務とは「善良な管理者の注意義務」の略で、通常期待される注意義務のことで、通常仕事をしていて想定しうる注意義務は果たす必要はあります。
業務を進める上で作成した成果物についての不具合があった場合に対する責任は負いません。作成物に対する責任のことは「契約不適合責任」(以前は瑕疵担保責任と言われていた)と呼びます。ただし、契約内容によって、個別に成果物の責任を負わせることも可能です。
総合すると、SES(準委任)契約は作業した分だけ確実に報酬を得たい場合や、様々な開発言語・開発現場で経験を積みたいという場合に向いている契約方式です。
請負契約の特徴
請負契約とは、成果物を納品して報酬を受け取る契約のことです。
特徴をまとめると以下の通りとなります。
- 契約の目的:仕事の完成(成果物の納品)
- 指揮命令権:発注者側にはない
- 受託者の責任:契約不適合責任がある
- 成果:完成に責任を負う
請負契約の目的は、仕事の「完成」であり、成果物の納品をして報酬を受け取ることになります。システム開発の場合なら、システム開発全体を請け負うなら完成したシステム、各工程単位の請負契約なら設計書やプログラムコードそのものを納品します。SES(準委任)契約と同様、指揮命令権は発注者側にはありません。契約した納期に成果物を納められることができれば、進ちょく管理や具体的な作業の進め方は受注者の自由にできます。
また、作成した成果物に関しては契約不適合責任があり、納品した成果物に問題があれば対応する義務を負います。総合すると、請負契約は自由度の高い仕事をしたい場合で、自分の得意分野である程度性の高い見積もりができ、確実に成果物を納品できるというケースで検討したい契約方式です。
SES(準委任)契約と請負契約の違い
SES(準委任)契約と請負契約の大きな違いは以下の通りです。
- 成果物を納品するかどうか
- 報酬を受け取るタイミング
- 成果物に対して責任を負うかどうか(契約不適合責任)
SES(準委任)契約は労働時間そのものが報酬の対象であり、成果物を納品しません。報酬の受け取りは労働時間の集計単位(通常は1ヶ月程度)で受け取り、契約期間が終了すれば、成果物が完成していなくても報酬を受け取って契約は終わります。また、基本的に作成した成果物に対する責任は負いません。
一方、請負契約の場合、成果物の納品以降が報酬の受け取りタイミングです。成果物の納品に時間がかかっても、最初の契約額が増えることはなく、逆に早く終了しても契約額を減らされることもありません。請負契約は成果物の契約不適合責任を負うため、納品した成果物何らかの不具合が発生した場合は対応する必要もあります。
業務委託契約2種類のメリットとデメリット
SES(準委任)契約のメリット
SES(準委任)契約のメリットは以下の3点です。
- 様々な開発経験が積める
- 残業のコントロールが簡単
- 作業した分だけ報酬が得られる
SES(準委任)契約は、一定期間で契約を終了するため、ひとつのプロジェクトに縛られることなく様々な現場を体験できます。開発言語や開発手法、職種など、様々な経験を積みたい人にとっては、SES(準委任)契約を結んで一定期間ごとに仕事を変えられる点は大きなメリットです。また、SES(準委任)契約は労働時間に対する報酬となっているため、残業時間を自分で調整できる点もメリットと言えます。
報酬も作業時間分に対して決まるため、成果物を納品するまで報酬が得られない請負契約に比べて、確実に仕事をした分だけ報酬が得られます。
SES(準委任)契約のデメリット
SES(準委任)契約のデメリットは以下の3点です。
- プロジェクト終了まで参画できるとは限らない
- 働く場所や時間に制約がある
- 収入が低く不安定
SES(準委任)契約は契約期間があるため、プロジェクトが終了するまで業務を続けられるとは限りません。途中で他のプロジェクトに移ると、その仕事をやり遂げたという達成感を得られにくいという点はデメリットと言えます。また、請負契約に比べて働く場所や時間に制約があり自由度が低いという点や、請負契約に比べて収入が低かったり不安定だったりといったマイナス面もあります。
請負契約のメリット
請負契約のメリットは以下の3点です。
- 業務の進め方、場所や時間などの制約が比較的自由である
- 効率よく作業できればより多く稼げる可能性がある
- 契約以外の依頼業務は断ることが可能
請負契約は、成果物の納品に対して責任は負いますが、作業の進め方や作業をする場所については基本的に制約がありません。SES(準委任)契約と比べて自由度の高い仕事ができる点は、請負契約のメリットです。また、効率よく仕事ができて時間的に余裕があれば、他の案件も並行で進められるため、より多くの収入が得られる可能性もあります。また、派遣契約のように発注者が指揮系統権を持つわけではないため、契約内容以外の仕事を依頼されたとしても断ることが可能です。
請負契約のデメリット
請負契約のデメリットは以下の3点です。
- 納品物に対する責任が生じる(契約不適合責任)
- 見積もりが甘いと残業が多くなる場合も
- 納品できない場合など報酬が得られない可能性もある
請負契約の場合は、納品した成果物に責任を負うため、不具合対応には応じなければなりません。SES(準委任)契約は労働時間を提供するだけですが、請負契約は責任が重くなる点はデメリットです。また、見積もりが甘い場合や不慣れなスキルが必要な仕事を請け負った場合、見積もりよりも作業が膨れ上がり、残業続きになってしまう可能性があります。
請負契約の場合は、より正確な見積もりが重要となるため、得意分野の業務を請け負うように注意しましょう。さらに、成果物の納品によって報酬を得るため、何らかの事情で納品できなくなった場合は報酬がまったく得られない可能性がある点もデメリットのひとつです。
成果物を一気に納品すると報酬を得られないリスクは大きくなるため、分割納品をしてそのたびに報酬を得るなどの対策は検討しておきましょう。
フリーランスとして業務委託契約を結ぶときの注意点6つ
- 二重派遣や偽装請負に注意
- 法律的な視点を持ち法律違反や強制には乗らない
- 報酬の支払いと交通費の扱いを明確に
- 不公平な契約になっていないか注意する
- 責任の所在を明確にする
- 不具合対応と追加案件対応の扱いを明確にする
これらの注意点について、もう少し詳しく解説します。
二重派遣や偽装請負に注意
二重派遣とは、二次請けや三次請けといった形で、派遣契約を複数結ぶ形で、エンドユーザー企業とフリーランスエンジニアの間に何重にも仲介が入る状態を指します。何重にも仲介が入るとその分仲介料が何重にも引かれ、本来受けられる報酬が目減りする点が一番の問題です。
また、本来は業務委託契約となるはずが「派遣」という扱いにされる「偽装請負」も大きな問題となります。具体的には、エンドユーザー企業や元請け企業がフリーランスエンジニアに対して指揮命令権があるかのような労働を強いられます。
二重派遣は労働者派遣法違反と職業安定法に抵触し、違反すると罰則の対象です。二重派遣で不利益を被らないよう、契約時には契約書の内容を確認し、業務委託契約なのに派遣契約のような扱いになっていないか気を付けましょう。
法律的な視点を持ち法律違反や強制には乗らない
契約書はしっかりと確認し、契約段階で不明な点がある場合は確認してください。法律に抵触するような働き方を強制されていないか気になるが自分で判断できない場合は、専門家に相談することも必要です。
あまりにも一方的な条件だと感じているのに強制されてそのまま契約すると、後悔のもとになります。
報酬の支払いと交通費の扱いを明確に
報酬の支払額と支払時期は、資金繰りの面で非常に重要です。
月末締め翌月払いというケースが一般的ですが、締め日と支払日が2ヶ月以上も離れていると資金繰りに困ることもあるでしょう。また、すぐに交通費が支払われないと、一時的に立て替えることになります。
交通費の扱いについても、支給を受けられるのか、いくらまで支給され、いつ入金されるのかといった細かいレベルまで確認が必要です。
不公平な契約になっていないか注意する
不公平な契約になっていないかどうかも注意したい点です。例えば、「相手がOKを出すまで何度も修正対応に応じる必要がある」という内容が盛り込まれていると、後から大きな負担になる可能性があります。他によくある例としては、消費税分を価格内に転嫁されるといったことが挙げられます。
一般的な契約書の例や不公平な契約の例などを確認するか、自分で判断がつかない場合は専門家に相談して、不公平な契約を締結しないように注意しましょう。
責任の所在を明確にする
作業をどこまで請け負うのか、担当範囲と責任の所在が明確になっているか確認しましょう。仕様書の作成はクライアント、製造とテストはこちら側、検収完了後の対応は追加料金、といった形で誰が何を担当するかを明確にします。
また、上流工程で作業が遅延した場合、以降の納期はどうするのかも確認しておきたい点です。クライアントから受け取る仕様書の作成が遅れているのに、製造とテストの納期が変わらないままだと、無理な業務になり当初契約していた納品物のクオリティが保てなくなります。
責任の所在を明確にしておかないと、後々トラブルのもとになるので注意してください。
不具合対応と追加案件対応の扱いを明確にする
不具合対応と追加案件対応の区別が明確でないクライアントも少なくありません。追加案件なのに「不具合対応」とされると、特に請負契約の場合かなり無理を強いられることになります。
契約書の時点で、不具合対応と追加案件対応の区切りを明確にして、追加案件対応の場合の料金についても定めておくようにしましょう。
基本的には「仕様書」に書かれていない機能は追加案件、仕様書の通りに実現しない場合は不具合、といった形で必ず合意を取っておくことが重要です。

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